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薬の臨床試験はアバウト(資料抜粋)

         朝日新聞編集委員 田辺 功
 
 資料全文 

インフルエンザのようなウイルスには、なかなか効く薬が少ないのです。その中で、タミフルは大変な人気です。とくに日本人は医師も国民も薬信仰がひどいですから、何と日本が世界の7割を消費しています。当然のこととはいえ、副作用もほとんどが日本人で、何人も子どもが亡くなっています。

ところでタミフルの有効性というのはどのくらいの規模で証明されているか、ご存じでしょうか、臨床試験の対象になった人は海外では700人ほど、日本人では300人ほどです。

その半分にタミフルを,半分に偽薬を与えて比較します。日本人のデータでは、発病48時間以内にタミフルを飲ませると、平均70時間で回復しました、一方、偽薬では93時間かかりました。

つまり、高熱などの状態が23時間短く済んだ。というわけです。
植物や実験用のネズミと違い。人間の遺伝子は非常に幅広く違っています、それなのに世界中で特効薬として売り出す薬の臨床試験の規模もこんなものですから、拍子抜けしませんか。実は、臨床試験に参加する人の遺伝子は全然分かっていません。

薬1は2割しか効きませんでした。薬2は7割効きました。偽薬は4割でした.この結果からは、薬2は有効で,薬1は無効。との結論が出るのですが、本当はそうでないかも知れません。

どれも効かないのに、薬1の集団には、自然に治る軽い病気の人が2割しかいなかったのに、薬2の集団には7人もいたという偶然の結果かも知れません.そんな偶然がいつでも起こりうるので、何度も臨床試験をする必要があるわけです。

人の遺伝子、とくに薬や病気に関する遺伝子がどんどん見つかり、今は外から見えない集団で臨床試験をしているのが,見える形で臨床試験をするようになれば,薬の有効性の評価は格段と上がるはずです。

それまでは、信じていたのに実は効かない特効薬だったということが繰り返されます。タミフルは予防効果があるという試験データもあります。インフルエンザにかかる前からタミフルを飲んでいた155人のうちでは2人しか感染しなかったのです。

一方、偽薬を飲んでいた153人中13人が感染しました。6分の1に減ったのはその通りですが、偽薬、つまり何もしなかった140人(92%)も感染していないのです。薬の予防効果、というのはどれもこんなものです。インフルエンザワクチンの有効率は70%などといいます。

もし、1000人にワクチンを打ち、150人がインフルエンザにかかったとします。打たない1000人のうち500人がかかったとすれば、500人の感染者を3割の150人に減らした、つまり7割減の意味です。

しかし、インフルエンザの流行は年によって10倍も20倍も違います、ウイルスが弱くて1000人の内50人しかかからない年に、15人で済んだとしても同じ計算で7割減になります。

医療の数字は大きく,そしてアバウトといいましたが,薬の効果効能も実にアバウトなものです。日本人は明らかに誤解をしていると思います。タミフルはどんな理由でインフルエンザウイルスを抑えるのか、です。感染してウイルスが細胞内に入り,どんどん増殖します。

細胞内にウイルスがあふれると、外へ飛び出す必要があります.タミフルはその放出をしにくく,邪魔します。しかし、細胞の中にウイルスがあふれると、通常の放出機構でなくて、臨時の非常時機構が働く気がします。

細胞からの出口を閉めても,ウイルスがあふれれば,壁を破って出てしまうかも知れないからです.タミフルは感染早期でないと効き目がないのはそのせいではないか、と思います.鳥インフルエンザは肺ばかりでなく,他の臓器でも増殖する可能性があります。

肺でしか増えないいまのインフルエンザウイルスでさえ量が多いと抑えられない薬が,通常より何倍も強力で広範囲にいるウイルスを見事に抑えることができるかどうか、全く怪しい話ではないでしょうか。

新型の強力インフルエンザウイルスが出現,世界を恐怖に陥れるとの可能性が、鳥インフルエンザの流行で現実味を増したのは事実です。この記事は私が書いたもので、77年3月です.いまの話の元のケースで,専門家は30年前から指摘し、スペインかぜ
の再来が「明日起きてもおかしくない」と警告し続けてきました。

関東大震災や東海大地震も何年も前から同じように「明日かも」といわれましたが,不意打ちのような宮城、神戸、信越などが先になっています。推計学も統計学の一部,統計学は数学の一部だと思いますが、なかなか思うように当たらないものです。

インフルエンザが流行しても全員がかかるわけではありません。スペインかぜの時には,インフルエンザワクチンもタミフルのように治療薬もなく、栄養や衛生レベルもいまとは比較できないほどよくありませんでした。ガーゼもスカスカでした。

それでも大部分の日本人は生き残ったのですから,心配しすぎなくてもいいのかも知れません。栄養だけで免疫力は格段に高まり、ウイルスを防御します.当時の新聞,東京朝日新聞の扱いを見てみました。大正7年、1918年に何回も報道はされていますが、一番大きいのは、インフルエンザで著名人が亡くなった時です。

11月には島村抱月が亡くなり、後追い自殺をする女優の松井須磨子の嘆きも載っています。12月には再び流行し、12月25日には、全国の患者数が1000万人との記事も載っています。しかし、社会面のトップではありません。

トップはクリスマスパーティの写真つき記事ですから,意外にのんびりした扱いです.翌19年2月には社会面のトップ扱いの記事がありました.2000万人以上が感染し、45万人も死んだら、今ならインフルエンザの記事ばかりが1年も2年も続くはずです。

医療や健康分野では、よく常識がくつがえります.今年5月には,野菜を食べても大腸がんは減らない、との疫学調査が発表されました。

02年には食物繊維と大腸がんの同じような話が出ています。日本人や米国人は健康食品,サプリメントが好きです。一方で,ハンバーグや焼き魚の発がん性を心配したりしています。

数字で出るものに惑わされやすいところがありますが,まったく数字やデータがなくても雰囲気で信じる。といったところもあります、食物などのきちんとした疫学調査データは少ないし,不確実なのは事実ですが、一方で,毎日の食物や水,運動が健康を作っていることも事実です。

「かしこい!?患者学」というシリーズを02年にしました.そのなかで,検査値にもふれています.血液検査などの項目には,基準値というのがあります。

特別に病気のない健康と思われ人の値を並べて,両端を切った95%以内が基準値で,はみ出すと、印がついて来ます。1項目だけだと5%の健康人が外れますが、10項目になると、どれか1つ以上外れる人は40%,20項目だと64%にもなります。

厚生労働省によると,00年の健診で1項目以上外れた人は45%.肝機能は14%,血圧は10%,血糖値は8%の人が異常値でした.これらの検査値が病気を反映していることもあれば、ただの個体差、ということもあります.

基準値を超えたから薬、というのは短絡的で、医師も自分の家族だと薬を出さないのに,他人の患者だと平気で出したりします.困ったものです。

「健診や人間ドックが病人つくり出している面がある。異常といわれた人の9割は治の必要がない」と専門医がいうほどです。

最初に紹介した80年のシリーズ「ほんとかしら」で。私は「正常値なら安心」を書きました。

当時は今よりも,病院ごとの検査値の幅や誤差も大かったのですが、同じ血圧でも、日頃から低い人と、高い人では意味が違ってきます。基準値でも安心とはいえず、基準値をオーバーしても心配はない。

日頃から体温の低い人は37度でもかなりしんどいが、もともと高い人は平気というような例もあります.医療のなかの数字は簡単に捕らえられない深みをもっていると思います。医療で注目されている最近の数字は、病院の手術数です。

週刊朝日は毎年、手術数のランキング本を出しています。外科手術や内科手技の技術レベルは何といっても経験で向上します、日本では約4万件の心臓手術を500余りの病院でしています。ところが

ドイツでは、12万件を約80病院でします。1病院平均が日本は80件なのにドイツは1500件、日本の最高数の病院もドイツの平均に達してない有り様です。

一般的には手術数の多い病院が技術が優秀であることは間違いがありません。ただし

手術数と成績が必ずしも比例するとは限りません、今は死亡率や治癒率などの成績データがありませんが、出てくる時代になればはっきりするでしょう。

さらに、病院で同じ100例といっても、10人の医師でするか、1人でするかもありますし、手術は患者ごとで難易度が違います。がんの末期の患者ばかりだと

治癒率はゼロのこともあります。また手術数ランキングを気にして、不要な患者まで手術してしまう本末転倒の病院の話も最近,耳にしました。

数学という高尚な分野の話はもともと無理ですが、医療の中の数字,その意味をもっと広く国民や患者の皆さんが知ることは,とても重要なことだと思います。本日はどうも有り難うございました。

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