免疫力アップで病気予防

ワクチン副作用情報 I thank an unknown cooperator.

Death caused by the radiation

あらかじめ計算された放射線による死

Death caused by the beforehand well-thought radiation

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はじめに

福島第一原発の原子炉からは、依然として放射能が放出されています。人間と環境にたいへん大きなリスクをもたらすことが考えられます。残念ながら、放射線被曝の規模に関して信頼できる情報がありませんが、被曝が日本の人々を数十年に渡って苦しめることだけは確かだと思われます。

その原因が食品となるのです。福島やチェルノブイリで起こったような原発事故の後、セシウム137のような放射性核種(訳注:放射性物質とも)が食品から体内に入るのは、 長期に渡って人間の健康にたいへん大きな危険をもたらします。そのため、放射線のリスクから守る目的で公的に規定された食品内の放射性核種の含有量の上限値ないし制限値には、特別の意義があります。

フクシマ原発事故は、チェルノブイリ原子炉爆発事故の場合もそうでしたが、有効な制限値が市民にどういう保護を保障してくるのかと、新たに疑問を投げかけてくれました。この問題に答えるため、フードウォッチはドイツ放射線防護協会のトーマス・デルゼー、セバスチャン・プフルークバイルの両氏に本レポートにあるスタディの作成を委託しました。

レポートは、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部と共同で公表します。レポートには、レポートの中心であるドイツ放射線防護協会のセバスチャン・プフルークバイル、トーマス・デルゼーの両氏のスタディに加えて、レポートの共同作成者である2つ
の団体によるテーゼと要求も含まれています。

レポートは、『より安全な』制限値というものは存在せず、いかなる制限値を設定してもそれが予想される放射線による死者の数をあらかじめ規定してしまうことを示しています。こうした背景を目の前にし、今回の調査は、有効な制限値がヨーロッパ、日本を問わず、たいへん無責任なものであり、故意に数千人の死者を容認するものであるとの結論に達しました。食品の放射能汚染が有効な制限値のわずか5%程度であったとしても、ドイツのような国では放射線による死亡者が年間最低でも7,700人にもなることを予想しなければなりません。

ただここには、甲状腺や膵臓の慢性疾患のような後遺症は含まれていません。レポートが、既存のEU制限値とその意義に関してオープンな議論が行われるよう促すとともに、政治と原子力産業が普及させている制限値が表向きには科学的に算出され、人間に安全をもたらすものだというイデオロギーに対抗するものになることを期待します。

フードウォッチとIPPNW(核戦争防止国際医師会議)は、市民の健康の保護を大幅に改善するため、これまでのEUの制限値を徹底的に引き下げることを要求します。だが、引き下げられた制限値でさえも、放射線による犠牲者が出ることを黙認しているものであることはよくわかっています。日本政府に対しても同じように、既存の制限値を大幅に引き下げるよう提言します。

フォードウォッチ
IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部
2011年9月

目次

はじめに 2

テーゼと要求 5
福島原発事故後のドイツ、ヨーロッパ、日本の食品放射線防護値による健康への影響に関する鑑定 9

1. まとめ 10
2. 放射能汚染食品の摂取による健康への危険 10
2.1. より安全な制限値というものはない 10
2.2. 重要な放射性核種 11
2.3. 「自然」放射線と人工放射性核種 13
3. 現在有効な放射能汚染食品制限値 14
3.1. 現在有効な放射能制限値の政治的背景 14
3.2. 現在有効なドイツとヨーロッパ、日本の制限値 17
3.3. 現在有効なウクライナとベラルーシの制限値 18
4. 既存の食品制限値による健康への危険 20
4.1. ドイツの放射線防護令 20
4.2. 欧州連合(EU) 20
4.2.1. EU制限値に基づいて食品を摂取した場合の甲状腺被曝 20
4.2.2. EU制限値に基づいて食品を摂取した場合の実効線量 21
4.2.3. EU制限値に基づいて食品を摂取した場合の放射線障害 22
4.3. 日本 23
4.3.1. 甲状腺被曝 23
4.3.2. 日本国内外で日本食品を摂取する場合の実効線量 24
5. ドイツ放射線防護令から演繹される制限値 26
6. 結論 29

表一覧
表 1: 原発で発生する主な放射性核種の半減期、壊変方式、崩壊生成物 13
表 2: 日本からの輸入食品制限値 18

付属文書 1 31
表 1: ウクライナの期限付き許容食品・飲料水放射能汚染制限値 31

表 2: ベラルーシにおける食品と飲料水のセシウム137とストロンチウム90の
制限値(RDU-99) 32

表 3: 1987年版EURATOM指令による許容食品制限値 32
表 4: 食品放射性核種制限値比較 33
付属文書 2 34
用語解説と単位 34
執筆者紹介 38

テーゼと要求

EU/日本の制限値は防護するものではなく、放射線による死者をあらかじめかなりの数計算に入れている

• 原発事故後に、セシウム137などの放射性核種が食品から体内に入るのは、長期に渡り人間の健康にたいへん大きな危険となる。そのため、放射線のリスクから守る食品内の放射性核種の含有量に関して公的に規定された上限値ないし制限値には、特別の意義がある。

• EUと日本で有効になっている放射線防護制限値は、市民を不必要に高い健康上のリスクにさらしている。ドイツにおいて市民が最も厳しいEUの制限値レベルで、つまり現在日本からの輸入品に規定されている制限値のレベルで汚染された食品だけを摂取していると想定すると、年間の実効線量はこどもと青少年で68ミリシーベルト、大人で33ミリシーベルトとなる。ドイツの放射線防護法で原発の平常運転時に個人に認められているすべての放射線暴露経路からの被曝線量は全体で年間1ミリシーベルトである。EUと日本の制限値を適用すると、こどもと青少年の許容被曝線量は68倍になる。たとえ食品が制限値のわずか2%しか汚染されていないとしても、実効線量は認められている1ミリシーベルト制限を上回る。

• 国際放射線防護委員会の計算をベースにすると、ドイツの食品にこの制限値を適用すると年間で最低約15万人の死者をもたらすことになる。その他の計算をベースにすると、死者数がさらに増える可能性もある。ドイツの市民全体が現在日本からの輸入食品に適用されている制限値の最高5%しか汚染されていない食品を食べるとしても、それでも依然として年間の死者が7,700人になるものと予想される。さらに、いろいろな疾患や遺伝子障害が起こることも考えられる。

• 他の一部の国では、より厳しい制限値が設定され、健康の保護が強化されている。ウクライナとベラルーシの制限値は他国より厳しく、過去数年間で常に規制が強化されてきた。ウクライナとベラルーシでは、たとえば乳製品のセシウム137の制限値が100ベクル/kgであるのに対して、EUでは370ベクレル/kg、日本では200ベクレル/kgとなっている。現在の制限値には矛盾があり、透明性がない

• EU委員会は日本のフクシマ原発事故後、緊急事態のために準備されていたものだが、それまで適用されたことのない指令を発効させた(『チェルノブイリ引き出し指令』)。指令で規定された日本からの輸入食品の汚染制限値はむしろそれによって、逆に引き上げられた。フクシマ事故前よりも規制が緩和され、それどころか日本自身の規制よりも規制がさらに緩和されたのだ。EU委員会はその後この決定を修正し、日本からEUに輸入される食品の制限値を指令より低いレベルに引き下げた。

• だが、EU制限値のちぐはぐさがそれによって排除されたわけではない。日本以外の第三国からの製品は、たとえ日本から輸入される同じ製品に比べて汚染されていても、EUが日本からの輸入製品に対して規定した特別規制の対象外であるので、域内での販売が認められる。その規制にしたがうと、EUへの直接輸入が認められない日本からの製品であっても、日本以外の第三国経由で輸入されれば、欧州での販売が認められることになる。現在の制限値は経済上の関心によって定められる

• EUと日本の放射線防護制限値が高すぎるのは、制限値の決定に影響力を持つ欧州原子力共同体(Euratom)と国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力産業と放射線医学界に支配されているからだ。世界保健機関(WHO)は50年以上も前に、国際原子力機関(IAEA)との間で結ばれた協定によって放射線による健康障害を定義する権利をIAEAに引き渡してしまった。IAEAの目的は、原子力エネルギーの普及と促進である。その結果として、チェルノブイリ事故による健康障害の評価はWHOではなく、IAEAによって行われた。フクシマの場合もWHOは、健康に対するリスク評価とリスク回避に当り、指導的な役割を果たさない。現在の制限値は欧州法と国際原則に反する

• 欧州連合の機能に関する条約(TFEU)にある環境保護(第191条)は、明らかに予防原則を基本にしている。この原則は、人間の健康が危険にさらされる場合、予防措置を講じるよう規定している。しかし、有効な制限値は経済上の関心によって不必要に高くなっており、健康の保護に備えておくという考えに反する。

• 現在の制限値は、放射線を最小限に止めるという原則、つまり国際放射線防護委員会が早い時期に掲げていた要求に矛盾している。この要求は国際的に達成され、ドイツの放射線防護法の核心(放射線防護令第6条)ともみることができる。この最小化原則には、不必要な放射線量はすべて回避すべきだという意味も含まれている。
より安全な制限値というものはない

• 人間はある程度放射線にさらされている。宇宙と大地からの放射線、カリウム40による内部被曝、ウラン崩壊系列から派生するラドンガスとその崩壊生成物から逃れることはできない。これらの放射線はドイツの場合、大人では全体で年間平均2.1ミリシーベルトに上る。医療診断で使われる放射線によって、放射線被曝線量が年間でさらに平均1.8ミリシーベルト増える。

• これらの放射線被曝に加えて、前世紀に行われた大気圏内核実験と原発の運転に起因する人工的な放射能汚染がある。食品に含まれるセシウム137などの放射性核種は自然界には存在しない。食品に含まれる放射性核種は原子炉で人工的に生成される。チェルノブイリやフクシマの原発事故後、これらの放射性核種がたくさん放出され、人間に影響を与えている。

• 食品中の放射性核種に関して公的に規定された制限値は、市民を健康障害から保護するものだ。ただ有害化学物質の場合と異なって、それ以下の放射能であれば害がないというしきい線量がない。そのため、「危険ではない」とか「害がない」、「心配ない」といえるような微量の放射線量もない。上限値や制限値を規定するとは、規制作成者が規制作成者にとって容認できると見られる病人数と死者数をその値によって規定するということだ。

• したがって、たとえドイツ政府が規定された放射能含有上限値は放射能汚染をできるだけ最小限に止めるという放射線防護の原則を配慮していると主張しても、「より安全な」制限値というものはない1。食品にごくわずかの放射性核種が入っているだけで、病気になったり、死に至る可能性がある。「できるだけ最小限に止める」という無意味な表現を選択したのは、当局の態度を適切にいい表している。つまり、最小化原則は制限値による実務においていくらでも制限されるということだ。

市民を保護するためには、制限値の強化が必要

• 汚染食品の取扱いを巡る規則はまず第一に、市民の健康を保護するものでなければならない。いかなる放射線制限値を認めようとも、それは意図的に疾患や死を容認するものだという事実からすると、流通や経済上の利害が健康の保護に影響を与えてはならない。健康障害のリスクを下げるには、有効な制限値を大幅に引き下げることが必要だ。

• この目的を達成するため、要求する制限値を算出するに当たり、最大年間実効線量として0.3ミリシーベルトを採用した。ドイツの放射線防護法はこの値を、原発の平常運転時に放射性物質が大気中と水中に放出される場合の放射線暴露の制限値としている。要求する制限値は、放射性核種の構成がフクシマの降下物と同じであると想定して、食品の摂取によって年間実効線量0.3ミリシーベルトを超えないことを保障しなければならない。

食品の摂取による年間実効線量をそれよりも高くすることは、犠牲者の数を増大させることになり、認められない。これまでのEUの放射性セシウムの制限値は乳幼児用食品で8ベクレル/kgに、その他のすべての食品で16ベクレル/kgに引き下げなければならない。放射性セシウムの許容制限値は現在、乳幼児用食品と乳製品で370ベクレル/kg(日本からの輸入品の場合は200ベクレル/kg)、その他
の食品で600ベクレル/kg(日本からの輸入品の場合は500ベクレル/kg)である2。

• 予防原則の意味でいうと、ヨウ素131の食品汚染は認めるべきではない。ヨウ素131の半減期が約8日と比較的短いことから、食品はヨウ素131で汚染されていないのが望ましい。ただ、放射性同位体が崩壊するまでの間に人間がヨウ
素131で汚染された食品を摂取するというのは考える必要はない。食品の多くは、他の放射性核種に汚染されていない限り、ヨウ素131が崩壊するまでの間、倉庫に保存されている可能性があり(冷凍されている可能性も)、その後に摂取しても問題はない。

• 日本の既存制限値も、十分な健康の保護を保障するものではない。容認できる健康の保護を保障するため、日本政府に対しても制限値を大幅に引き下げるよう提言する。

• だがたとえ制限値を低くしても、死者が出ることをあらかじめ計算に入れなければならない。制限値による規制のおかげで食品の摂取によって年間0.3ミリシーベルトを超える実効線量にドイツ市民がさらされることがないと確認されるとしても、依然として放射線によって死亡する人が最低1,200人増加することになろう。実効線量がその5%にしかならなくても、依然として年間最低60人の死者が見込まれる。それでも、制限値を引き下げることによって放射線障害に対する人間の保護が大幅に改善される。制限値の高さの如何にかかわらず放射線犠牲者を回避できないという問題は、原子力関連施設の運転の継続と建設に疑問を呈する十分な機会となるべきだ。


1 ドイツ連邦議会印刷物17/5720号、ウルリケ・ヘェフケン議員、ジコレ・マイシュ議員、ベーベル・ヘェーン議員ら90年同盟/緑の党議員団議員の問い合わせに対する連邦政府の回答、印刷物17/5596号、日本からの放射能汚染食品(Radioaktiv verstrahlte Lebensmittel aus Japan)。

2 これは、セシウム137の場合4ないし8ベクレル/kgの制限値に相当する。本レポートにあるスタディの執筆者は、放射線被曝の基準核種としてセシウム137を適用している(その根拠の詳細はスタディを参照)。執筆者の考えでは、放射性セシウム全体を基準にすると弱点があるからだ。たとえばセシウム全体の場合、セシウム134のほうが早く崩壊することから、時間の経緯とともにストロンチウムの汚染度が高まり、その結果として健康への害が出る可能性が高まる。

それとは関係なく、「乳幼児用食品」と「こども、大人用の食品」に区別するのも適切ではない。17歳までのこどもと青少年は、大人に比べて放射線量に対して非常に敏感で、特別の保護を必要としている。だが、EUの制限値ではセシウム全体が適用されているので、現在の既存制限値と比較しやすいようにするため、レポートの制限値の引き下げ要求もセシウム全体を基準にしている。


平常時と緊急時のどちらにも統一の制限値を

• 制限値を容認可能な健康の保護を保障するレベルにまで引き下げるのが必要である他、EUの『制限値混乱状態』も排除しなければならない。これは、各国毎に制限値が異なり、いくつもの制限値が存在するということがあってはならないということだ。さらに、平常時と緊急時で制限値が異なるということもあってはならず、緊急時でも平常時でも最高の健康の保護が保障されなければならない。

福島原発事故後のドイツ、ヨーロッパ、日本の食品放射線防護値による健康への影響に関する鑑定

トーマス・デルゼー

セバスチャン・プフルークバイル
(ドイツ放射線防護協会/Gesellschaft für Strahlenschutz e.V.)
フードウォッチ委託スタディ
2011年8月、ベルリン

1. まとめ

1. 食品から放射性核種を体内に取り込むのは、長期的には原発事故後の最も重大な被曝源である。EU委員会は日本のフクシマ原発事故後、日本からの輸入品に対して 食品汚染制限値を日本で実際に許可されているよりも高い制限値に引き上げた。EUは必要もなく、日本では摂取が認められていない放射能汚染食品の輸入を認めたのだ。この事実が知れ渡ると、制限値を「暫定的に」日本の制限値に合わせて引き下げた。EUの制限値はまた、チェルノブイリ原発事故の影響を被ったウクライナとベラルーシで数年前から適用されている制限値に比べ、最高500倍も高くなっている。

2. こういう制限値を規定するというのは、ヨーロッパ市民と日本市民の放射線犠牲者数を決定しているということだ。現在有効なドイツ放射線防護令第47条は、原子力関連施設の平常運転時に放射性物質が大気中ないし水中に放出されることによって起こる公衆個人の年間放射線被曝の制限値を0.3ミリシーベルトとしている。有効なEU制限値レベルで放射能汚染された特定の食品と飲料だけを摂取していると、この0.3ミリシーベルトという数値は何倍にも上回ってしまう。こどもで276倍超、大人で110倍超となる。

3. EU制限値にしたがうと、こどもが年間約80ミリシーベルト被曝する可能性がある。それによって、後年ガンで死亡するこどもが10万人当り年間約400人から4000人増加することが容認される。大人の場合同じように食品を摂取すると、年間33ミリシーベルト被曝すると考えられる。それによって、後年ガンで死亡する大人が10万人当り年間約165人から1650人増加すると見られる。

4. こういう食品汚染制限値を規定するのは、日本政府とヨーロッパ各国の政府が自国市民から放射線犠牲者を出すことを求めているということだ。ここで、有効な線量の考え(実効線量)ではガンによる死亡しか考慮されておらず、それよりも多発する疾患の件数が考慮されていないことに注意しなければならない。チェルノブイリ
原発事故後、ガンになる以外に免疫性低下、早期老化現象、若年時の心臓・呼吸器系疾患、胃や甲状腺、膵臓(糖尿病)の慢性疾患などの肉体疾患のほか、精神神経障害、遺伝子障害、奇形が低線量被曝の影響として起こっている。これらについても、各国の政府は無視している。

2. 放射能汚染食品の摂取による健康への危険

2.1. より安全な制限値というものはない

一般的には、それ以下であれば放射能が障害をもたらさないという制限値はない。これは、数十年前からの一般的な学術上の定説である。ドイツの放射線防護令もその中で規定されている放射線量の計算規則において、ごくわずかな低線量までは線形線量反応関係とこの事実を前提にしている 3 。ごくわずかな低線量であっても「危険ではない」、「害がない」、「心配ない」ということではない。

3 放射線防護に関してEURATOMガイドラインを実施するための命令(Verordnung für die Umsetzung von EURATOMRichtlinien
zum Strahlenschutz)(放射線防護令 ‒ StrlSchV)、2001年7月20日版(連邦官報I、1714ページ)、2002年4月22日改訂 (連邦官報I、1459ページ)、2007年12月13日箇条法第3条により改正 (連邦官報I、2930ページ),最新版は2008年8月26日箇条法第2条により改正 (連邦官報I、1793ページ)

シーベルト(Sv)による放射線量表示は、放射線被曝による障害度を示す尺度で、放射線障害を推計するのに役立つ。上限値ないし制限値を規定するとは、規制作成者が規制作成者にとって容認できると見られる病人数と死者数、つまり人間の犠牲者数を規定するということだ。有害化学物質の場合とは異なり、低線量域(数十ミリシーベルトまで)の放射線量値はそれによって起こる疾患の可能な重さを示しているのではなく、被曝した人間集団の中で発病する人の人数の可能性を示しているにすぎない。

それがいわゆる実効線量になると、考えられる死者件数でしかなくなる。疾患者の数はそれよりも多い。ガンになってもガン患者がみんな死亡するとは限らないからだ。ガン患者では症状がはっきりと表に出る。だが、誰がガンになるかは偶然だと思われる。したがって、それを「確率的」放射線障害という。それに対して、高い放射線量によって放射線障害が現れ、放射線量の高さが急性放射線障害の症状を決める場合、「確定的」放射線障害という。「差し迫った危険がない(No Immediate Danger)」とは、単に急性放射線障害の危険がないということにすぎない。

しかし、確率的放射線障害(ガン、白血病など)になるリスクが高くなる可能性がある。つまり、「差し迫った危険がない」とは、警告を解除する意味とは全く違う問題である。最小化の原則が適用されている。放射能はできるだけ取り込まないようにしなければなら
ない。EU制限値を守るとは、健康上心配ないことを保障するわけではない。

独立系専門家はしたがって、チェルノブイリ事故後当時有効だった1976年の放射線防護令を基準にして放射性セシウムに関しては大人で最高30から50ベクレル/kg、こどもおよび授乳中の女性と妊娠中の女性で最高10から20ベクレル/kgまで汚染された食品の摂取を提言していた。ここでは、食品中のセシウム137含有量を基準にしてセシウム134の割合を50%、ストロンチウム90の割合を1%とし、プルトニウムは勘定に入れていなかった。

だが、ベルリンの放射線測定所がチェルノブイリ事故後に行った調査が示しているように、食品中の実際のストロンチウム含有量はそれよりも高かった。そのため、さらに評価基準にも不確定要素があることから、こども用食品の制限値として多くの場合、放射性セシウム5ベクレル/kg
が勧告された 4。

これまで日本で発表された分析結果によると、フクシマから降下して食品に入った放射性核種の割合はチェルノブイリ事故後にドイツで見られたものとは異なっている。日本の場合、半減期の短いセシウム134の割合が高く、より危険だ。こうした事実からも、新たなリスク計算が必要だ。

2.2. 重要な放射性核種

食品から放射性核種を体内に取り込むのは、長期的には原発事故後の最も重大な被曝源である。半減期の長い放射性核種に特に注意しなければならないが、必ずしもすべての放射性核種に十分留意できるわけではない。セシウム137とセシウム134は放射性崩壊によってガンマ線を放出する割合が多いので簡単に識別され、放射能汚染を示すいわゆる典型的な核種やインジケータ的な核種として利用される。ストロンチウム90は生理学的な理由からも特別注意する必要がある。また、比較的半減期が短いが、初期段階では高濃度でたくさん飛散するので、ヨウ素131も同じく特別の注意が必要だ。最後にプルトニウムは特に半減期が長く、放射性的にも毒性が強い。

放射性ヨウ素

ヨウ素は実際にはすべての生物に存在する本質的な微量元素である。細胞機能の維持、甲状腺ホルモンの作成に必要となる。原子炉事故によってヨウ素131が放出されると、ヨウ素 4 放射線テレックス(Strahlentelex)11/1987号、1987年6月18日発行 12
131が生体内で自然ヨウ素に代わって吸収され、甲状腺に高濃度で蓄積される。

チェルノブイリ事故後、甲状腺機能障害や特に悪性度の高い甲状腺ガンがこどもばかりでなく大人にも急激に増加したが、これは放射線被曝による最初の特に目立った影響だった 5。

放射性セシウム

地上核実験が開始されて以降、すべての生物内に放射性セシウム137が確認できるようになった。1959年と1964年にほ乳類で最高濃度のセシウム137が確認され、セシウム137の量は1962年よりも最高8倍まで高くなっていた。体内に取り入れられる放射能のほぼ100%が食品によるもので、セシウムと化学的性質が似ているカリウムと量的に比較すると、食品内での割合と同じようにセシウム量が平均で倍になっていることがわかった。人間の体内での生物学的半減期は約100日程度にもかかわらず、放射性セシウムもある程度濃縮されるということだ。

特に筋肉細胞がカリウムよりもセシウムを優先して取り入れる。平衡状態では、筋肉が最も高いセシウムの放射能を示し、次に肝臓、心臓、脾臓、性器、肺、脳と続く 6。

ストロンチウム

ストロンチウム90は純粋なベータ線核種で、体内への摂取後に放射能毒性を示す。ストロンチウム90は化学的性質がカルシウムに似ており、カルシウムと置き換わって骨に蓄積される。骨から造血器官、骨髄が被曝する。生物学的半減期が長いことから(数ヶ月から数年)、放射性セシウムと異なってストロンチウムのほうが次第に濃縮されていくので、食品に含まれていた形跡がわずかだとわかっても、それに伴って危険性がかなり高まる。

ストロンチウムの放射線毒性が強いのは、崩壊エネルギーが同じであっても、公式に規定されたストロンチウムの線量係数が放射性セシウムの線量係数よりも約10倍も高く設定されていることからもわかる。ストロンチウム90崩壊時の粒子放射線エネルギーが特に骨髄を被曝させる。その結果、造血障害、免疫性障害、白血病が起こる可能性がある 5,7。

プルトニウム

プルトニウムは、その放射線毒性、核兵器製造に利用できるということからして、人間が造る最も危険な物質の一つである。プルトニウムの放射線毒性は、その他の重金属と同程度の化学的毒性をはるかに上回っている。原子炉から出たプルトニウムを吸い込むと、かなり高い確率で肺ガンとなる。原子炉から出たプルトニウムはその全体量の50から60%がプルトニウム239で、20%余りがプルトニウム240、約15%がプルトニウム241である。プルトニウム238は2%程度しか含まれていない。

プルトニウム同位体の半減期がそれぞれ異なるので、質量の割合が放射能の割合になるわけではない。放射能の割合では、プルトニウム241が約98%でトップ、次にプルトニウム238の約1.6%、プルトニウム239の0.25%、プルトニウム240の0.32%と続く。放射線上重要なのは、アルファ崩壊だ。プルトニウム238(たとえば酸化プルトニウムの形で)は非常に水に溶けにくく、プルトニウム239より非常に早いスピードで肺から肝臓、骨に分配されるので、そこではプルトニウム239よりも濃度が高くなる。しかし、国際放射線防護
委員会(ICRP)のモデル計算ではすべてのプルトニウム同位体が同等に取り扱われている 8。

食品チェーンには、硝酸プルトニウムのような溶けやすい化合物が入ってきやすい。 植物が溶けにくいプルトニウム化合物よりも溶けやすい化合物を土壌から吸収しやすいからだ。食品とともに摂取しても、溶けにくい化合物は大部分が早い段階で排出されてしまう。プルトニウムは土壌で比較的固く結合するので、植物に吸収される量は比較的少ない。したがって、プルトニウムは主に微細な浮遊物を吸い込むことによって体内に取り込まれる。


5 E.レンクフェルダー(Lengfelder)、E.デミトシク(Demidschik)、J.デミトシク(Demidschik)、K.ベッカ
ー(Becker)、H.ラーベス(Rabes)、L.ビルコヴァ(Birukowa):チェルノブイリ事故10年:CISにおける甲状
腺ガンとその他の健康への影響(10 Jahre nach der Tschernobyl-Katastrophe: Schilddrüsenkrebs und andere Folgen
für die Gesundheit in der GUS)、ミュンヒェン医学週刊( Münchener Medizinische Wochenschrift )138 (15)、
259-264 ページ(1996年)

6 ジャクリーネ・ブルクハルト(Jacqueline Burkhardt)、エーリヒ・ヴィルト(Erich Wirth)、連邦保健局、放射
線衛生研究所、ISHノート 95号、1986年9月、放射線テレックス(Strahlentelex)39号、1988年8月18日発行、2ペ
ージ、5ページも参照。

7 ローランド・ショルツ(Roland Scholz):放射線による生命の危険(Bedrohung des Lebens durch radioaktive
Strahlung)、IPPNWスタディ集第4刊、1997年


表 1: 原発で発生する主な放射性核種の半減期、壊変方式、崩壊生成物9

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2.3. 「自然」放射線と人工放射性核種

ある程度の放射線にさらされるのは避けることができない。宇宙と大地からの放射線、カリウム40による内部被曝、ウラン崩壊系列から派生するラドンガスとその崩壊生成物から逃れることは現実問題として不可能である。しかし、「自然背景放射線」は絶対値ではなく、飛行機で飛ぶことを控えることで、たとえば宇宙からの放射線を低減することができる。ウランとその崩壊生成物は人間活動によって、たとえばウラン鉱山での採掘作業とその後の処理などによってより危険になる。それによって、食品や大気中、水中に混入しやすくなるからだ。「自然背景放射線」ということばの意味がはっきり定義されているわけではない。実際米国では、原発から放出された放射性物質が、1年経った後でもまだ減衰しないと、「自
然背景放射線」に換算される 10。

プルトニウムの利用に違憲提訴(Verfassungsklage gegen Plutonium-Nutzung)、放射線テレックス(Strahlentelex)35/1988号 (R.シュタインベルク(Steinberg)、S.デヴィット(. de Witt )による、連邦憲法裁判所申請、H.-J.フォーゲル(Vogel)博士ら、その他ドイツ連邦議会議員179名。フランクフルト/フライブルク、1988年4月21日、PR番号. 2424.87.T.:H.クーニ(Kuni):プルトニウムによる放射線障害の危険(Die Gefahr von Strahlenschäden durch Plutonium)、マールブルク、198712月15日;B.シュプリート(Splieth)、プルトニウムによる放射線被曝(Strahlenbelastung durch Plutonium):新旧推計法(Alte und neue Abschätzungsverfahren)、低線量人間影響シンポジウム、マールブルク大、1988年2月27日).9 放射線テレックス(Strahlentelex)590-591号、2011年8月4日発行、4ページ

自然放射線源はドイツの場合、大人では全体で年間平均約2.1ミリシーベルトとなる。医療診断に放射線を適用することで、さらに平均で約1.8ミリシーベルト被曝している。ドイツ放射線防護庁の環境放射能と放射線被曝に関する報告では、これらの値は数年来ほぼ一定値を示している。

たとえばカリウムは、生物の生息する自然において生きるのに重要な元素である。濃度関係を密接に保ちながら人間の体内で維持されており、1万個のうち1個のカリウム原子が半減期12億8000万年で崩壊する放射性同位体カリウム40であるにすぎない。それに対して、セシウム137、セシウム134は自然界には存在しない。セシウム137とセシウム134は原子炉内で人工的に生成され、原発事故時に放出された後に人間に影響を与える。

1960年代半ばまで続られた地上核実験では、さらにストロンチウム90がセシウム137とほぼ同じ割合で降下物の中に含まれていた。チェルノブイリ事故前には、ヨーロッパ全域で平米当り約1000ベクレルのセシウム137が土壌に存在した。チェルノブイリからの降下物によって、平米当りの土壌の放射性セシウム汚染がドイツ北部とベルリンの周辺で約4,000から5,000ベクレルに、ドイツ南部とミュンヒェン周辺で約40,000ベクレル以上に上昇した 11 。

プルトニウムも、まず自然には存在しない人工的に合成される化学元素である。ウラン鉱石にだけ、まだ地質上の原始時代に由来するごくわずかな痕跡量のプルトニウムが見られる。
希釈度にして1対1兆と、地殻全体で2から3グラム程度だ。特に軍事目的でプルトニウムがトン単位で生産されてきた。1960年代半ばまでの地上核実験によって、最高6トンのプルトニウム239が地表に拡散されたと推計される 12 。

3. 現在有効な放射能汚染食品制限値

3.1. 現在有効な放射能制限値の政治的背景

チェルノブイリ原発事故の結果として、ドイツでは法的に放射線防護予防法が1987年はじめに施行した。同法に準じて、原発危機時の対策が中央で管理されることになった。特にデータ評価と線量制限値の新たな設定が、連邦環境自然保護原子炉安全大臣の管轄の下に置かれた。「それによって、連邦と州の勧告に矛盾がでるのを基本的に排除した」と、1986年9月29日の法案提案理由説明書にある13。


10 ロザリー・バーテル(Rosalie Bertell):『No Immediate Danger?』 ドイツ語版、ゴールドマン(Goldmann).1987年、39ページ.

11 ベルリン市都市開発環境保護省発行、ベルリン環境アトラス、土壌の放射能(セシウム134とセシウム137).(Umweltatlas Berlin, Radioaktivität im Boden (Cäsium-134 und Cäsium-137) )、1992年3月E. レンクフェルダー(Lengfelder):放射線の影響 ‒ 放射線のリスク、医師の目とカルテから見たデータ、評価、結果(Strahlenwirkung –Strahlenrisiko, Daten, Bewertung und Folgerungen ausärztlicher Sicht, Karten)、ecomed.1990年.

12 プルトニウムの利用に違憲提訴(Verfassungsklage gegen Plutonium-Nutzung)、放射線テレックス(Strahlentelex)35/1988号 (R.シュタインベルク(Steinberg)、S.デヴィット(. de Witt )による、連邦憲法裁判所申請、H.-J.フォーゲル(Vogel)博士ら、その他ドイツ連邦議会議員179名。フランクフルト/フライブルク、1988年4月21日、PR番号. 2424.87.T.:H.クーニ(Kuni):プルトニウムによる放射線障害の危険(Die Gefahr von Strahlenschäden durch Plutonium)、マールブルク、198712月15日;B.シュプリート(Splieth)、プルトニウムによる放射線被曝(Strahlenbelastung durch Plutonium):新旧推計法(Alte und neue Abschätzungsverfahren)、低線量人間影響シンポジウム、マールブルク大、1988年2月27日)


欧州共同体も、次に原発事故が起こるのに備えておきたかった。EU委員会は1987年1月23日、欧州共同体理事会に勧告書を提出した。勧告書は「独立高度専門家臨時部会」によって作成された 14。 提案された「暴露経路管理システム」の基本は、「社会に対するコストと対策を導入することによるリスクが放射線暴露を阻止することによるコストとリスクを超えてはならない」ということだった 13。

それによって、当時の放射線防護指令にあった最小化の原則が国際放射線防護委員会(ICRP ‒ International Commission on Radiological Protection)が宣伝してきた「ALARA(As Low As Reasonably Achievable)」(アララ)の原則にすり替えられた。これは、合理的、現実的に達成できる限り低くということだ15。 ここで、「合理的」というのは経済性の観点から決められている。1973年と1977年、ICRPはその立場を明確にして、費用便益分析によって何が「合理的、現実的に」達成されるのか評価しなければならないと説明した。

雑誌「Health Physics」において1982年、米国原子力産業の2人の代表が米国で放射能汚染が起こった場合の社会的コストを量的に評価するための計算方法と数字を公開した 16 。ドル・セントでもたらされる「便益」が放射線防護対策のコストと関連付けられる。1975年には3万5,000ドル、インフレの影響で1988年には10万ドルが、ガン死亡者ないしガン患者の代償として計算された。

ここで適用された基点は、実施される放射線防護策のコストと放射
線防護策を実行しなかった結果発生する健康上の後遺症の社会的コストをできるだけ低くしておくべきだということだ。

それ以来、EUにおいても放射線防護が経済上の観点よりもその下位に置かれている 17。欧州共同体によるチェルノブイリ制限値の有効期限が最初に1987年秋まで延期されたが、それは特に「(制限値)指令が流通業界で大きな問題を引き起こさなかった」からであった 14。

国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告は通常、各国の国家放射線防護委員会と立法化勧告の基盤になっているが、ICRPは利害対立の象徴ともなっている18 。ICRPの委員は自分を自分でリクルートし、 ICRPの事務局を監督下に置く国際放射線医学会(ISR)の後援を得ている。

ICRPの交渉議事録を見ればはっきりするのだが、勧告はいつも重要な事業部門の活動を妨げないことがはっきりしない限り作成されていなかった。ICRP勧告はいつも、学術上の知見から数年も遅れを取っている 19。


13 ここではエルンスト・レースラー(Ernst Rößler)に従って引用:次の原発大事故のための「準備」 („Vorsorge“für den nächsten GAU)、放射線テレックス(Strahlentelex)11/1987号

14 1987年1月23日の欧州共同体報告書

15 1965年9月17日のICRP勧告No. 9、ドイツ放射線防護令へは2001年に反映された。放射性物質を環境に放出する
いわゆる放出規則を導入することによって最小化原則が無効とされた。

16 Paul G. Voillequé, Robert A. Pavlick : Societal Cost of Radiation Exposure, Health Physics Vol. 43, No. 3, pp. 405-409,1982; ここでは、放射線テレックス(Strahlentelex) 53/1989号に従って引用:死と苦悩を5億ドルで相殺(Tod und
Leid mit 500 Millionen Dollar verrechnet)

17 その間2001年のドイツ放射線防護令改正版でも、 放射性物質を環境に放出するいわゆる放出規則を導入する
ことによって最小化の原則が無効とされた。

18 カール・Z・モーガン(Karl Z. Morgan)を参照。物理学者、国立研究センター、テネシー州オークリッジ国立
研究所 健康物理学部部長、自身1950年から1971年までICRP委員。カール・Z・モーガン(Karl Z. Morgan):変更
が望ましい - 国際放射線防護勧告がいかに作成されているかについて(Veränderungen wünschenswert – Über die
Art und Weise, wie internationale Strahlenschutzempfehlungen verfasst werden)、ドイツ放射線防護協会、ボンのオッ
ト・フーク放射線研究所報告、6/1933号、3-12ページ

19 ヴォルフガング・ケーンライン(Wolfgang Köhnlein): 国内・国際放射線防護(Der nationale und
internationale Strahlenschutz)放射線防護委員会(ICRP)の活動と勧告(Die Aktivitäten und Empfehlungen der
Internationalen Strahlenschutzkommission (ICRP))、パートI、II、医学環境学会 12 2/99号、157-162ページ、
3/99号、244-252ページ


もう一つの規制作成者であるべき世界保健機関(WHO)は1958年5月、その定義権限を国際原子力機関(IAEA)に引き渡してしまった20。 1957年、WHOは放射線が遺伝子に与える影響に関する会議を招集し、会議には全世界から専門家が参加した 21。放射線暴露が増加する場合に長期リスクについてその後も調査していくことが勧告された。

1958年、会議に引き続いてWHOは「原子力の平和利用が精神的健康に与える影響の視点」に関して会議を招集するよう依頼された 22。原子力時代において放射線暴露を回避できないこと、健康への影響に関して公衆に非常に大きな不安がある問題に関する会議であった。健康への影響について公衆にすべてを知らせるべきではないことが提案された。

すると1959年5月28日、IAEAとWHOの間で協定が調印され、その中で両者は「あらゆる面での研究も含めて独自に国際的な保健事業を
促進、展開、支援、調整するWHOの権利を侵害することなく、全世界での平和利用を目的とした原子力の研究開発と実用化を促進、支援、調整する権限がIAEAに優先的に与えられる」ことを承認した(協定第一条)。

それ以降、IAEAが自身を放射線が健康に与える影響に関して情報を公開する番人と見る一方で、WHOは病人医療と公衆の健康促進に寄与することになった。WHOにはさらに第一条第三項で、以下の制限が課せられる。「いずれかの機関が他方が重大な関心を持つ事業ないし活動を開始したい場合、常に前者が後者と協議して両者の合意の下で案件を調整するものとする」。

この条文についていえば、IAEAの物理研究者が放射線と健康の研究に関して決定を下すものとし、原子力の普及というIAEAの目標に悪影響をもたらす可能性のある情報を抑圧するという方向でIAEAが解釈しているのは明らかだ。

この協定の影響は、チェルノブイリ事故後にWHOではなく、IAEAが健康のリスクを評価した時に特に明らかとなった。国際放射線防護委員会(ICRP)の哲学を実践するIAEAは、被曝した市民に見られる健康上の影響の痕跡を何らかの形で放射線と結びつけることを否定し、こどもの甲状腺ガンだけを放射線に起因するものだと認めた。

「放射線防護は民主的な催し物ではない」。これは、経済団体である核燃料サイクル・核技術協会(WKK)が2009年9月にベルリンで開催したシンポジウムで主張された見方である。核技術経済団体の事務局長は会場で、市民のための放射線防護の「最適化」とは放射線被曝の最小化のようなものを意味するものではなく、経済的観点が考慮されると主張した。

エッセンの核事業サービス会社(GNS)を代表してベルント・ローレンツ博士も、このメッセージとともに「継続性と安定性」を求める産業界ロビーの願いを「放射線防護令法令化で決定権のあるグループ」宛に強調した。同氏はドイツ再統一まで、東ドイツ政府の原子力安全放射線防止庁にいた人物で、統一後原発運転者側のロビイストになった。

同氏はさらに、ICRPの『準委員』であるほか、原発運転者側の機関である欧州原子力施設安全基準計画(ENISS)の委員でもある。ローレンツ自身の発言によると、ICRP Publication 26の時期に現在の自分の考えに至ったという。同時にそれは、東ドイツにおいても最小化を追求する放射線防護原則が「最適化」に代わり、人間の価値が低減される放射線被曝の1人・1シーベルト当り3万東独マルクに換算された時であった。

ローレンツによると、ICRPは新しい勧告(2007年のICRP Publication 103)を最終的に「継続性と安定性」というモットーの下に置いたのだという。 1990年の古いICRP勧告60を基盤にした法律は改正する必要がない。制限値もそのままでもいい。線量制限値や線量制限以下で放射線防護を最適化するのは「致命
的」なことだ。

それによって、最終的には容認できる放射線障害と容認できない放射線障害の境界がより高い制限値からより低い制限値に引き下げられるからだ。ICRPが現在勧告しているように、放射線防護において人間を保護するかどうかに関わらずに環境保護をも宣言す
るのは、ローレンツにとって問題だという。動物、植物の放射線量を計算するのは止めるべきだと、ローレンツはいう。

ALARA原則の意味において最適化のプロセスがあり、利害状況に応じて「as low as reasonably achievable」をいろいろな意味で主張できるほうが、も
っと重要だとする23。


20 放射線に対する保護に対する放射線の保護(Schutz der Strahlen gegen Schutz vor Strahlung):IAEAとWHOの利害
争い(Interessenkonflikt zwischen IAEA und WHO)、放射線テレックス(Strahlentelex) 316-317/2000

21 WHO Effects of Radiation on Human Heredity, 1957年

22 WHO Technical Report Service, 1958年

3.2. 現在有効なドイツとヨーロッパ、日本の制限値

チェルノブイリ原発事故以降ドイツには、食品の取扱いに関して放射性セシウム(セシウム134とセシウム137)の制限値しかなかった。牛乳、乳製品、乳幼児用食品で370ベクレル/lないし370ベクレル/kg、その他の食品で600ベクレル/kgだった 24 。

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日本で大事故が起こってから、EU指令にしたがって輸入食品に対して明らかに高い制限値が適用されていた。放射性ヨウ素、ストロンチウム、プルトニウムについても日本の許容値よりも圧倒的に高い値を規定していた。大事故が起こった場合に「備え」、EUは1987年に高い制限値を規定し、大事故時に新たに議論したり、公衆の注目を浴びることなく自動的に高い制限値を施行させることができるようにしていたのだ 25,。この程度まで汚染される食品は消費される食品の10%程度にすぎないだろうという想定でこの許容汚染値が規定されたと、後になって説明された。

ドイツの消費者保護省がこの問題について言及することもなく、EU委員会は2011年3月25日、実施指令によってこの高い新制限値の適用範囲を日本からの輸入食品、輸入飼料だけに制限した26 。指令では、ストロンチウム、プルトニウムについては言及されず、ヨウ素131とセシウム134、セシウム137に関してだけ制限値が遵守されているかどうか検査されなければならなかった。その他の第三国からの輸入に関しては、この規制は適用されない。

EUはそれによって、必要もなく日本自身では摂取が認められていない汚染食品の輸入を認めた。この問題が知れ渡ることになって、それに対して抗議が出てきてようやく、ドイツ食料農業消費者保護省の2011年4月8日のプレスリリースによると、EU委員会とEU加盟国は同じ4月8日にブリュッセルで、日本で有効な最高許容制限値を日本からの輸入食品、輸入飼料の新しい制限値とすることで合意した。2011年4月12日、このフクシマ指令の改正が公示された 27 (表2参照)。

それに伴い、日本の制限値が「暫定的に」1990年のEURATOM指令779号の制限値を代用する。「暫定的に」とは、日本側が万一その制限値を引き上げた場合、EURATOM指令の元の制限値まで制限値を新たに引き上げることを前提にしてという意味である。濃縮製品、乾燥製品の値は、EU指令には「直接消費するために復元された製品をベースに」計算されるとあり、これは、消費のために希釈されるので濃縮、乾燥された形ではその値はさらに高くてもいいということである。

ドイツ産、ヨーロッパ産の食品については、今後も元々の放射性セシウムの制限値が有効で、牛乳、乳製品については370ベクル/kg、その他の食品については600ベクレル/kgである。

チェルノブイリ後25年経った現在も、いくつかの地域では野生キノコ、野生肉(イノシシ、ノロジカ、アカシカ)、羊、 肉食淡水魚(ペルカ(スズキ類)、カワカマス、ホタル
ジャコ)でこの制限値を上回る。


23 トーマス・デルゼー(Th. Dersee):放射線防護は民主的な催し物ではない(Strahlenschutz ist keine
demokratische Veranstaltung)、ベルリンで2009年9月16に行われた経済団体「核燃料サイクル・原子力技術協会(WKK)」のシンポジウム、放射線テレックス(Strahlentelex) 546-547/2009号、7-8ページ

24 EU指令 733/2008:http://bit.ly/hzdjsP

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25 EU指令 3954/1987: http://bit.ly/g0DsJF、EURATOM指令 779/90号

26 EU実施指令 297/2011: http://bit.ly/hgjgE9

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27 フクシマ原発事故後の日本産食品・飼料輸入特別規則公布EU指令 297/2011号を改正するための2011年4月11日
の理事会実施指令(EU) 351/2011号;2011年4月12日の欧州連合広報 L97/20-23


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西ヨーロッパでは、農業製品の破棄処分、各国内とヨーロッパ諸国間での食品流通への弊害を恐れ、いろいろ思案を巡らせることになった。それに伴う損失は次に事故が起こった場合に、より少なく、あるいは完全に回避できるようにするべきだ。

当局では、こういう方法でしか食品の安全供給を保障できないと議論された。汚染食品から市民を保護することが、農業と流通業界の損失の後の最後に位置付けられた。前記表でセシウム同位体、ストロンチウム90、アルファ線核種、ヨウ素131に関してカッコ内に提示した制限値は、現在も次に事故が起こった場合に備えて引き出しの中に仕舞われており、事故が起こった時に議会で新たに議論することなく、暗黙裏に即刻施行される可能性がある。

フクシマ事故への反応は、責任ある人物たちが海外での事故というよりは、むしろヨーロッパで事故が起こることを想定して対応していたことを示している。ウクライナ、ベラルーシでは、当局はチェルノブイリ後の時期において他を優先させていた。両国では、市民の放射線被曝(汚染土壌からの直接被曝、汚染粉塵の吸引)はほとんど回避できないか、まったく回避できない上に線量が高いので、汚染食品による被曝などその他の被曝をできるだけ低く抑えるようにしなければならないと考えられていたのだ。ウクライナに関しては、こういう考え方が時間とともにどう展開していったのか、今でも後を追って見ることができる。

チェルノブイリ事故後数日後、飲料水の有効な制限値は1リ
ットル当り3700ベクレルで(Bq/l、核種毎の割当なし)、1ヶ月後に370 Bq/l(ベータ線核種全体で)となった。1987年末にはセシウム137の制限値を20 Bq/lとし、10年後に2 Bq/lに規定した。この地域では主に主食となっているジャガイモの制限値3700Bq/kg(1986年、ベータ線核種全体で)から、現在セシウム137の制限値は70 Bq/kgに引き下げられている。

パンについては、370 Bq/kg(ベータ線核種全体で)からセシウム137を20 Bq/kgに引き下げた。乳幼児用食品の制限値は現在、セシウム137で40 Bq/kg、ストロンチウム90で5 Bq/kgと
なっている。ベラルーシでは1999年4月26日以降、飲料水の制限値はセシウム137で10 Bq/l、ストロンチウム90で0.37 Bq/lとなっている。牛乳は、100ないし3.7 Bq/lである。

ジャガイモ、パン、乳幼児用食品はウクライナの制限値に非常に近いが、ベラルーシではストロンチウム90の制限値が乳幼児用食品で特別厳しく、1.85 Bq/kgとなっている。チェルノブイリ後ウクライナとベラルーシは、現在もEUで原発事故後の時期に適用される
制限値よりも明らかに低い制限値を規定した。飲料水ばかりでなく、牛乳、野菜、ジャガイモ、パン、焼き菓子類、乳幼児用食品にも明らかに低い制限値が規定されているところに特別の意味がある。両国の制限値は平均で、セシウム137でEUの許容制限値の10分の1から60分の1、ストロンチウム90で15分の1から200分の1となっている(付属文書1の表4から7を参照)。

これらの食品は、毎日必要とする基本食品である。ウクライナとベラルーシで制限値がより厳しくなっていても、食品の供給不足にならなかったのは明らかだ。食品は公認された食品の流通域内で検査される。それに対して、食品のフリーマーケットでは検査が十分に
機能しなかった。心配なのは、村の住民や都市住民の中に貧困から高い割合で食品を自己調達している住民がいることで、これらの住民は森でキノコやベリー類を集めたり、自分の『小屋』でジャガイモやキャベツ類を栽培して、土壌がどの程度汚染されているか比較的気にしないでいることだ。

ベラルーシでは、制限値を低くすることで集団の放射線量、追ってはその結果起こる健康の障害をできるだけ低くしておくほうがマクロ経済的に効果的で、安上がりになるという考え方が、決定権者の同意を得た。これは西側諸国の考え方とは対照的で、西側では制限値を高くすることで流通が制限されることは少なくなるが、ガンやその他の疾患が増えるので保健コストが増大することと、人間が苦しむことが黙認されている。

ウクライナとベラルーシの制限値とドイツの制限値(牛乳と乳製品でセシウム同位体370Bq/kgないしBq/l、その他の食品で600Bq/kg)に違いがあるので、その結果、ウクライナとベラルーシでは販売してはならない食品の多くが、ドイツでは問題なく販売できるという
問題が生じる。

食習慣が異なっているからということで、日本では制限値に関して重点の置き方が違うということは想定できない。線量計算に影響がでないように、制限値はいくつもの異なる食品に関して全体で規定されるからだ。ウクライナとベラルーシの汚染食品規制方法はいずれにせよ、1987年のEURATOM指令よりも市民の保健をめざしたものとなっている。

4. 既存の食品制限値による健康への危険

4.1. ドイツの放射線防護令

以下のすべての計算では、現在有効なドイツの放射線防護令28の規則を分類、比較するために使用する。放射線防護令はドイツ政府の原子力法を基本に、連邦参議院(上院)の同意を得て公布される。連邦議会(下院)はここでは立法化に関与しない。この手続きは、国際放射線防護委員会(ICRP)と欧州連合(EU)の勧告を国内法に法制化するもので、線量計算の計算規則を法的に確定している 29。

放射線防護令は最近では2001年に改正された。放射線防護令が現在有効な法体系を形成しているので、同令をここでは基点として使用する。そのため、平常時(原発事故のない場合)に適用できる放射線防護値もそこから演繹するのは意味のあることだ。たが、この保守的なやり方が現在有効な放射線防護令の考え方、数値群に同意していると誤解されてはならない。

4.2. 欧州連合(EU)

日本から欧州連合(EU)加盟国に輸入される食品に関しては、前述したように表 2の制限値が適用される。ドイツ産、ヨーロッパ産、その他の国からの食品には、引き続き3.2項に挙げた制限値が有効となるにすぎない。つまり、放射性セシウムに関して牛乳と乳製品で370ベクレル/kg、その他の食品で600ベクレル/kgである。

4.2.1. EU制限値に基づいて食品を摂取した場合の甲状腺被曝
2001年のドイツ放射線防護令付属文書VII 表 1に基づく平均摂取率で、表 2に記載されたヨウ素のEU制限値で放射能汚染された食品を摂取した場合、甲状腺の年間被曝線量は以下のようになる。


28 放射線防護に関してEURATOMガイドラインを実施するための命令(Verordnung für die Umsetzung von EURATOMRichtlinien
zum Strahlenschutz)(放射線防護令 ‒ StrlSchV)、2001年7月20日版(連邦官報I、1714ページ)、2002年4月22日改訂 (連邦官報I、1459ページ)、2007年12月13日箇条法第3条により改正 (連邦官報I、2930ページ),最新版は2008年8月26日箇条法第2条により改正 (連邦官報I、1793ページ)29 摂取量(kg) × 放射能濃度(Bq/kg) × ICRP勧告と2001年7月23日のドイツ連邦環境省の規定に従う線量係数(Sv/Bq) = 線量(Sv); 1 Sv = 1,000ミリシーベルト、たとえば E-6は、正確な数学的な表示(10-6 = 0.000,001)に対するドイツ放射線防護令で使用されている官僚事務上の記載方法である。


画像の説明

2001年のドイツ放射線防護令第47条は、原子力関連施設の平常運転時における甲状腺の臓器線量制限値を年間0.9ミリシーベルトとしている。同令第49条は事故時にそれを150ミリシーベルトまで認めているが、これはいわゆる実効線量で7.5ミリシーベルトに相当する36。

現在認められている程度に放射性ヨウ素で汚染された食品を摂取した場合、これらの値はいずれのケースでも何倍にも上回ってしまう。ヨウ素131の半減期は8.06日である。そのため、フクシマ原発が収束して放射性物質が環境に放出されなくなった後でも、ヨウ素131の放射能が初期量の1%未満に低減するまでには半減期の7倍ないし2ヶ月弱かかる。元々2,000ベクレルあったヨウ素131は2ヶ月弱後に約16ベクレルとなり、およそ半減期の11倍、88日ないし3ヶ月弱になってようやく元々あったヨウ素131の放射能が1ベクレル未満となる。このスタディの作成時点では、フクシマ事故原発は収束しておらず、ヨウ素131がもう放出されないとすることはできない。

4.2.2. EU制限値に基づいて食品を摂取した場合の実効線量

長期的には、半減期2.06年のセシウム134、半減期30.2年のセシウム137、半減期28.8年のストロンチウム90、半減期2万4110年のプルトニウム239のように残存性の長い放射性核種に格別の注意が必要だ。これまで公表された日本産食品の測定結果によると、セシウム134とセシウム137がほぼ同じ割合で含まれている。これを基にして、EUの制限値と2001年のドイツ放射線防護令付属文書VII 表 1に基づく平均摂取率を使うと、年間実効線量は以下のようになる。


30 (145 kg/年 × 100 Bq/kg + 45 kg × 300 Bq/kg + 80,5 kg × 2000 Bq/kg + 55 kg × 300 Bq/kg) × 3,7E-6 Sv/Bq = 0,76 Sv =
760 mSv/年

31 (160 kg/年 × 300 Bq/kg + 154 kg/年 × 2000 Bq/kg + 100 kg/年 × 300 Bq/kg) × 3,6E-6 Sv/Bq = 1,39 Sv/年 = 1.390 mSv/

32 (160 kg/年 × 300 Bq/kg + 280 kg/年 × 2000 Bq/kg + 100 kg/年 × 300 Bq/kg) × 2,1E-6 Sv/Bq = 1,34 Sv/年 = 1.340 mSv/

33 (170 kg/年 × 300 Bq/kg + 328,5 kg/年 × 2000 Bq/kg + 150 kg/年 × 300 Bq/kg)× 1,0E-6 Sv/Bq = 0,75 Sv/年 = 750 mSv/

34 (170 kg/年 × 300 Bq/kg + 356 kg/年 × 2000 Bq/kg + 200 kg/年 × 300 Bq/kg)× 6,8E-7 Sv/Bq = 0,56 Sv/年 = 560 mSv/年

35 (130 kg/年 × 300 Bq/kg + 350,5 kg/年 × 2000 Bq/kg + 350 kg/年 × 300 Bq/kg)× 4,3E-7 Sv/Bq = 0,36 Sv/年 = 360 mSv/

36 ドイツ放射線防護令付属文書VI パートC 2は、甲状腺の荷重を最高5%までしか認めていない。甲状腺の荷重は、甲状腺ガンが手術で処置しやすいので低く設定された。


画像の説明


37 145 kg 乳幼児用食品/年 × [100 Bq/kg × (2,1E-8 Sv/Bq Cs-137 + 2,6E-8 Sv/Bq Cs-134) + 75 Bq/kg × 2,3E-7 Sv/Bq Sr-
90 + 1 Bq/kg × 4,2E-6 Sv/Bq Pu-239 + 100 Bq/kg × 1,8E-7 Sv/Bq I-131] + 100 kg 牛乳、その他の飲料/年 × [100 Bq/kg ×
(2,1E-8 Sv/Bq Cs-137 + 2,6E-8 Sv/Bq Cs-134) + 125 Bq/kg × 2,3E-7 Sv/Bq Sr-90 + 1 Bq/kg × 4,2E-6 Sv/Bq Pu-239 + 300
Bq/kg × 1,8E-7 Sv/Bq I-131] + 80,5 kg その他の食品/年 × [250 Bq/kg × (2,1E-8 Sv/Bq Cs-137 + 2,6E-8 Sv/Bq Cs-134) +
750 Bq/kg × 2,3E-7 Sv/Bq Sr-90 + 10 Bq/kg × 4,2E-6 Sv/Bq Pu-239 + 2000 Bq/kg × 1,8E-7 Sv/Bq I-131] = 62,8 mSv/年

38 260 kg 牛乳、その他の飲料/年 × [100 Bq/kg × (1,2E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,6E-8 Sv/Bq Cs-134) + 125 Bq/kg × 7,3E-8
Sv/Bq Sr-90 + 1 Bq/kg × 4,2E-7 Sv/Bq Pu-239 + 300 Bq/kg × 1,8E-7 Sv/Bq I-131] + 154 その他の食品/年 × [250 Bq/kg ×
(1,2E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,6E-8 Sv/Bq Cs-134) + 750 Bq/kg × 7,3E-8 Sv/Bq Sr-90 + 10 Bq/kg × 4,2E-7 Sv/Bq Pu-239 +
2000 Bq/kg × 1,8E-7 Sv/Bq I-131] = 82,8 mSv/年

39 260 kg 牛乳、その他の飲料/年 × [100 Bq/kg × (9,6E-9 Sv/Bq Cs-137 + 1,3E-8 Sv/Bq Cs-134) + 125 Bq/kg × 4,7E-8
Sv/Bq Sr-90 + 1 Bq/kg × 3,3E-7 Sv/Bq Pu-239 + 300 Bq/kg × 1,0E-7 Sv/Bq I-131] + 280 kg その他の食品/年 × [250 Bq/kg
× (9,6E-9 Sv/Bq Cs-137 + 1,3E-8 Sv/Bq Cs-134) + 750 Bq/kg × 4,7E-8 Sv/Bq Sr-90 + 10 Bq/kg × 3,3E-7 Sv/Bq Pu-239 +
2000 Bq/kg × 1,0E-7 Sv/Bq I-131] = 78,4 mSv/年

40 320 kg 牛乳、その他の飲料/年 × [100 Bq/kg × (1,0E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,4E-8 Sv/Bq Cs-134) + 125 Bq/kg × 6,0E-8
Sv/Bq Sr-90 + 1 Bq/kg × 2,7E-7 Sv/Bq Pu-239 + 300 Bq/kg × 5,2E-8 Sv/Bq I-131] + 328,5 kg その他の食品/年 × [250
Bq/kg × (1,0E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,4E-8 Sv/Bq Cs-134) + 750 Bq/kg × 6,0E-8 Sv/Bq Sr-90 + 10 Bq/kg × 2,7E-7 Sv/Bq Pu-
239 + 2000 Bq/kg × 5,2E-8 Sv/Bq I-131] = 60,1 mSv/年

41 370 kg 牛乳、その他の飲料/年 × [100 Bq/kg × (1,3E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,9E-8 Sv/Bq Cs-134) + 125 Bq/kg × 8,0E-8
Sv/Bq Sr-90 + 1 Bq/kg × 2,4E-7 Sv/Bq Pu-239 + 300 Bq/kg × 3,4E-8 Sv/Bq I-131] + 356 kg その他の食品/年 × [250 Bq/kg
× (1,3E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,9E-8 Sv/Bq Cs-134) + 750 Bq/kg × 8,0E-8 Sv/Bq Sr-90 + 10 Bq/kg × 2,4E-7 Sv/Bq Pu-239 +
2000 Bq/kg × 3,4E-8 Sv/Bq I-131] = 58,0 mSv/年

42 480 kg 牛乳、その他の飲料/年 × [100 Bq/kg × (1,3E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,9E-8 Sv/Bq Cs-134) + 125 Bq/kg × 2,8E-8
Sv/Bq Sr-90 + 1 Bq/kg × 2,5E-7 Sv/Bq Pu-239 + 300 Bq/kg × 2,2E-8 Sv/Bq I-131] + 350,5 kg その他の食品/年 × [250
Bq/kg × (1,3E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1,9E-8 Sv/Bq Cs-134) + 750 Bq/kg × 2,8E-8 Sv/Bq Sr-90 + 10 Bq/kg × 2,5E-7 Sv/Bq Pu-
239 + 2000 Bq/kg × 2,2E-8 Sv/Bq I-131] = 33,0 mSv/年
43 ICRPのリスク評価:5% /Sv

44 RH. ヌースバウム(Nussbaum)、 E. ベルセイ(Belsey)、 W. ケーンライン(Köhnlein): Recent Mortality
Statistics for Distally Exposed A-Bomb Survivors: The Lifetime Cancer Risk for Exposure under 50 cGy (rad). Medicina
Nuclearis 1990. 2,151-162. 、放射線テレックス(Strahlentelex) 90-91号、1990月10月4日発行


さらに原爆雲の影響を原発事故後のフォールアウト被曝の影響と同等にすることができないことを考慮すると、死者数がさらに10倍になる、つまり年間80ミリシーベルトで被曝した10万人のこどものうち約4000人が死亡することも考えられる。大人の場合、同じように制限値レベルの汚染食品を摂取することで年間30ミリシーベルト被曝したとすると、後年ガンで死亡する人が10万人当り年間165人から1,650人増加することになろう。

これらの値は、単に議論が多様であることを反映しているにすぎない。ICRPは最も小さい推計値を規定した。ルーディ・H.・ヌースバウムとヴォルフガング・ケーンラインの考察 44は、ヌースバウムが1987年にはじめて公表しているが、広島と長崎のデータに関してさらにたくさんの独立した評価を行うよう提案した。評価は多様性を極めており、現在、ICRP推計の7.6倍にまで評価するものもある。

こうした評価の多様性は原爆投下の閃光にも当てはまる 45。原発事故によるフォールアウト被曝と比較するには、1回の外部被曝以外にその後放射性核種によって内部被曝が長期に渡って続くことをさらに考慮する必要がある。そこでは、アルファ線核種の荷重を原爆閃光の放射線やベータ線核種よりも高く見て置かなければなら
ないことに注意が必要で、そのため、ICRPの想定よりも約10の1乗高くすることを提言する(係数10)。

ここで、いわゆる実効線量の考え方がガンによる死亡についてだけしか考慮しておらず、ガンの死亡件数よりも数の多い疾患件数については考慮されていないことに注意しなければならない。チェルノブイリ事故後低線量による肉体への影響として、ガン疾患以外に免疫性低下、早期老化現象、若年時の心臓・呼吸器系疾患、胃や甲状腺、膵臓(糖尿病)の慢性疾患、その他精神神経障害が見られた。特に心配なのは遺伝子への影響で、この種の影響は次世代にならないと完全には現れてはこない。

これらすべての健康障害は放射線防護令の規則に基づいて行われる推計ではまだ考慮されないままとなっているのが現状だ。

4.3. 日本

最初に食品汚染が日本政府側から発表されたのは、2011年3月20日だった 46。フクシマ事故原発から南へ100キロメートル超離れた茨城県日立市のほうれん草に、ヨウ素131が5万4,000ベクレル/kg、放射性セシウムが1,931ベクレル/kg検出された。フクシマ事故原発から南へ約75キロメートル離れた茨城県北茨城市のほうれん草に、ヨウ素131が2万4,000ベクレル/kg、放射性セシウムが690ベクレル/kg検出された。東京首都圏の千葉県旭産の食用春菊(日本の葉菜類)に、ヨウ素131が4,300ベクレル/kg検出された。

4.3.1. 甲状腺被曝

一つの事例を使いながら、日本で実際に起こったレベルで放射性ヨウ素(ヨウ素131)に汚染された食品をごくわずかに摂取しただけでも、その結果甲状腺がかなり被曝されることを示しておくことにする。たとえば日本で測定されたように、ヨウ素131が5万4,000ベクレル/kg検出されたほうれん草を100グラム(0.1キログラム)摂取した後の甲状腺の臓器線量は以下のようになる 29。


RH. ヌースバウム(Nussbaum)、 W. ケーンライン(Köhnlein): Inconsistencies and Open Questions Regarding Low-
Dose Health Effects of Ionizing Radiation, Environmental Health Perspectives Vol. 102, No. 8、1994年8月、 656-667ペー

45 W. ケーンライン(Köhnlein): 放射線防護委員会(ICRP)の活動と勧告(Die Aktivitäten und Empfehlungen der
Internationalen Strahlenschutzkommission (ICRP))、オットー・フーク放射線研究所(Otto Hug Strahleninstitute)レ
ポート21-22号、2000年、5-25ページ (表 2)

46 放射線テレックス(Strahlentelex)582-583号、2011年4月7日発行、10ページ


画像の説明

2001年のドイツ放射線防護令第47条は、原子力関連施設の平常運転時における甲状腺の臓器線量制限値を年間0.9ミリシーベルトとしている。だが、日本で前述した汚染ほうれん草をわずか100グラム摂取しただけで、この値を数倍上回ってしまう。事故時について、ドイツ放射線防護令第49条は甲状腺の臓器線量を150ミリシーベルトまで認めているが、これはいわゆる実効線量では、7.5ミリシーベルトに相当する 53。

ヨウ素131の半減期は8.06日である。そのため、フクシマ原発が収束して放射性物質が環境に放出されなくなった後でも、ヨウ素131の放射能が初期量の1%未満に低減するまでには半減期の7倍ないし2ヶ月弱かかる。ヨウ素131は2ヶ月弱後に54,000ベクレルから約422ベクレルとなり、だいたい半減期の16倍の期間、129日間ないし4.3ヶ月でようやくヨウ素131の放射能が1ベクレル未満となる。

4.3.2. 日本国内外で日本食品を摂取する場合の実効線量

現在まだ日本の食品に関する測定結果が少なく、そこからたくさんの人間集団に関して結論を出すことはできない。本項では参考になるように、セシウム137汚染がわずか100 Bq/kgの食品を1年間摂取した場合、年齢層に応じて実効線量がどの程度になるか示してみることにする。その他の核種による汚染については、それが長期に渡った場合どの程度の放射線線量になるか、すぐに換算することもできる。長期的には、残存性の長い以下の放射性核種に特に注意しなければならない。

半減期が2.06年のセシウム134
半減期が30.02年のセシウム137
半減期が28.8年のストロンチウム90
半減期が2万4,110年のプルトニウム239
燃料棒が2年間燃焼すると、燃料棒内に残る残存性の長い放射性核種の割合は以下のようになる。

セシウム137 : セシウム134 : ストロンチウム90 : プルトニウム239 = 100:25:75:0.5。チェルノブイリの降下物の場合は、セシウム137とセシウム134の割合は2:1だった。これまで日本で公表された測定結果によると、日本の降下物ではセシム137とセシウム134がほぼ同じ割合になっている。ストロンチウム90とプルトニウム239の含有量についてははっきりしておらず、十分な測定結果はすぐには入手できないと見られる。福島第一原発で使用されていた混合酸化物(MOX)燃料集合体には他の核燃料よりも多くのプルトニウムが含まれているが、すべてがすべて放出されているわけではない。ストロンチウムは過去の原発事故では、事故施設近くに飛散しているだけで、事故原発から遠くはなれた地点では多くの場合わずかな濃度でしか飛散していない 54 。


47 0,1 kg × 54.000 Bq/kg × 3,7E-6 Sv/Bq = 20ミリシーベルト
48 0,1 kg × 54.000 Bq/kg × 3,6E-6 Sv/Bq = 19,4 ミリシーベルト
49 0,1 kg × 54.000 Bq/kg × 2,1E-6 Sv/Bq = 11,3 ミリシーベルト
50 0,1 kg × 54.000 Bq/kg × 1,0E-6 Sv/Bq = 5,4ミリシーベルト
51 0,1 kg × 54.000 Bq/kg × 6,8E-7 Sv/Bq = 3,7ミリシーベルト
52 0,1 kg × 54.000 Bq/kg × 4,3E-7 Sv/Bq = 2,3ミリシーベルト

53 ドイツ放射線防護令付属文書VI パートC 2は、甲状腺の荷重を最高5%までしか認めていない。甲状腺の荷重は、甲状腺ガンが手術で処置しやすいので低く設定された。


そのため以下では、日本では全体として放射性核種の割合が以下のようになっているものとして計算する。セシウム137 : セシウム134 : ストロンチウム90 : プルトニウム239 = 100:100:50:0,5
2001年のドイツ放射線防護令付属文書VII 表 1に基づく平均摂取率を使って、1キログラム当り100ベクレルのセシウム137(Cs-137)、100ベクレルのセシウム134(Cs-134)、50ベ
クレルのストロンチウム90(Sr-90)、0.5ベクレルのプロトニウム239(Pu-239)で汚染さ
れた食品を摂取した場合、実効線量は以下のようになる。

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5. ドイツ放射線防護令から演繹される制限値

現在有効なEUと日本の制限値は、健康障害に対して決してより安全な保護をもたらすものではない。その反対に、EUと日本の制限値は人間を政治的に計算されたリスクにさらし、放射線障害から発病したり、死亡するリスクをもたらす。消費者は安全性で揺れ動いている。

政治が制限値のリスクに関する疑問をオープンに解明してくれないからだ。政治は、人間がどういう保護を期待しているのか、どういう保護が可能なのかに関して議論しようとしない。原子力関連施設の平常運転時に関するドイツ放射線防護令の規定も、十分な安全性をもたらすわけではない。しかしドイツ放射線防護令は、事故時に関するEU指令と比較すると、障害のリスクをかなり低減する。放射線防護令はドイツで有効な法だが、以下ではドイツ放射線防護令(第47条)の考え方を取り入れた場合の食品内の放射性核種の制限値を演繹してみることにする。

ドイツ放射線防護令第47条は、原子力関連施設の平常運転時において放射性物質が大気中や水中に放出されることによって被曝する公衆個人の年間放射線被曝制限値を0.3ミリシーベルトとしている。この考えは、長年の考察と調査を経て作成され、まず1976年に法的に規定された。

これは、原子力産業と市民の要望の間の妥協で、国際放射線防護委員会の勧告(ICRP、Publikation No. 9、1966年)に添ったものだった61。それによると、文明の影響に起因する市民の被曝線量は一世代当り、つまり30年当り0.05シーベルトを超えてはならない。
ICRPは、「この値は近い将来の原子力事業に合理的な余裕を与える」という見方をしていた。

1969年、この考えが当時のドイツ原子力委員会によって受け継がれた。とりわけ原子力関連施設には、そのうちの0.02シーベルトを割り当てるべきだという。この割当によって、原子力技術が当時遺伝子学的に許容できると見られていた線量全体を原子力だけに使用しないことを保障するということだった。0.02シーベルトという被曝制限はさらに分割された。

その半分が大気中への放射性物質の放出、0.02シーベルトのもう半分が水中への放出だった。この被曝制限を年間被曝に換算すると、原子力関連施設の運転者に義務付けられているいわゆる0.3ミリシーベルトの考えとなる。付属文書VIIでドイツ放射線防護令は現在、大気中暴露と水中暴露に関してだけ放射線暴露を推計するための想定項目を規定し、その他の暴露経路
は考慮しないとしている。

ただ、現場立地場所の特性や施設・設備に特別の理由があれば、
その他の暴露経路を考慮するべきだという。ということは、実際には任意の暴露経路を想定することができるということだ。
そのためここでは、比較の尺度として0.3ミリシーベルト/年を選択する。この被曝線量が、放射線被曝が最も少なく、許容できると見なせる暴露経路で、障害率が最も低い暴露経路を代表しているからだ。

比較尺度としてさらに高い値を使うこともできるが、その場合は
障害率が高くなることを容認しなければならない。だがその場合は、容認すべき障害の程度に関して公衆と議論して、民主主義的に正当だとして決議することを前提にすることになろう。こうした二つの手続きはこれまで一度も行われたことがない。

ここで行う推計が保守的になっているのは、0.3ミリシーベルトの考え方が数十年間に渡って変わることなく使用されてきたが、その間に電離放射線の危険に対する評価が厳しくなってきたからだ。そのためわれわれは、より現実的に想定することによって、食品中の放射性核種の制限値がより低く、容認できるものになるのを確信している。

100Bq/kgのセシウム137で(セシウム134、ストロンチウム90、プルトニウム239については前述の割合で)それぞれ汚染された固定食品と飲料だけを摂取すると、それだけで年間0.3ミリシーベルトという値を上回ってしまう。年間0.3ミリシーベルトの被曝基準を守りたければ、ドイツ放射線防護令の論理からすると、 食品の汚染は以下の表の数値を上回ってはならない。


61 ヴォルフガング・ケーンライン(Wolfgang Köhnlein): 放射線防護委員会(ICRP)の活動と勧告(Die Aktivitäten und Empfehlungen der Internationalen Strahlenschutzkommission (ICRP))、オットー・フーク放射線研究
所(Otto Hug Strahleninstitute)レポート21-22号、ベルリン、ブレーメン、2000年、5-25ページ


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評価の基盤に不確定要素があるので、われわれは、セシウム137の制限値はこどもと青少年に対して食品1キログラム当り4ベクレルを、大人に対しては8ベクレルを超えるべきではないと勧告する。そうしないと、0.3ミリシーベルトという制限値を守るのは保障できない。

4.3.2項で計算した同位体の関係を下にすると、セシウム137以外にも割合に応じて以下のようにセシウム134、ストロンチウム90、プルトニウム239が含まれていることになる。

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10万人の人がそれぞれ年間0.3ミリシーベルトで被曝したとすると、国際放射線防護委員会(ICRP)のリスク数を使用した場合、それでも後年ガンで死亡する人が年間1人から2人増加する結果となる 43 。広島と長崎のデータを独立に評価した結果44、さらに原爆雲の影響を原発事故後のフォールアウト被曝の影響と同等にすることができないことを考慮すると、死者数がさらに10倍になる、つまり年間0.3ミリシーベルトで被曝した10万人の人のうち約15人が死亡することも考えられる(4.2.3参照)45。ドイツの人口は約8,000万人なので、こういう条件の下では後年ガンで死亡する人が1,200人から1万2,000人増加することになろう。

年間0.3ミリシーベルトを超えて被曝することになると、それに応じてガンで死亡する件数も増える。

注意: このスタディでは、セシウム137の放射能を基本強度として放射線被曝と食品汚染の制限値の勧告に使用している。この方法は、制限値に放射性セシウム(セシウム137とセシウム134)のデータだけを使うEUの方法(表 1参照)とは対照的である。EUの方法では、セシウム全体の放射能制限値を長年適用する場合、セシウム全体の値が同じでもセシウム134(半減期2.06年)の割合が次第に低くなっていき、同じ程度でセシウム137(半減期30.2年)の割合が最高2倍にまで増大することを指摘しておかなければならない。

その際、セシウムの測定からは把握されないが、ストロンチウム90(半減期28.8年)とプルトニウム239(半減期2万4,110年)の割合も同じように倍増する。それによって、たとえばこども一人の
放射線被曝はセシウムの全体量が同じでも、13年の過程で連続的に0.3ミリシーンベルト/年から0.5ミリシーベルト/年に上昇する。それでは、放射線防護の最小化の原則に反する。

(訳注:執筆者に直接問い合わせた結果、ここでは以下のような論理になっているということ。)

引用)時間の経過とともにセシウム134の放射能が弱まっているにもかかわらず、セシウム全体の汚染制限値が変わらないので、そのことが制限値に反映されない。最終的に制限値では、放射性セシ
ウムの全体値がセシウム137だけに割り当てられることになる。同時に、セシウム137と他の放射性物質の割合(関係)が一定に保たれるので、制限値においてセシウム137への割当が多くなればなるほど、ストロンチウム90とプルトニウム239の割合も自動的に多くなる。

その結果、ストロンチウム90とプルトニウム239の人体への影響が大きいだけに、セシウム全体の制限値が同じでも、制限値を遵守していると、時間の経過とともに人体への影響がより大きくなるという矛盾が生じる。

6. 結論

6.1.ヨーロッパと日本、その他の地域では、汚染食品の取扱いにおいて第一に市民の健康保護を目指した規則を講じるべきだ。放射線の制限値のどれを取ってもそれを容認することは意識的に死を黙認することになるという事実を目の前にして、流通と経済上の関心が健康の保護に影響を与えてはならない。

6. 2 .ヨーロッパにおいては、フクシマ事故後であっても事故時用の食品制限値を導入する必要はない。ヨーロッパの制限値は、たとえば平常時に適用されるドイツ放射線防護令を基にした制限値まで大幅に引き下げるべきだ。つまり、乳幼児、こども、青少年は食品1キログラム当り最高4ベクレルしかセシウム137で汚染されていない食品を摂取すべきだ。大人には、食品1キログラム当りのセシウム137の制限値として8ベクレルを適用する。

6. 3 .日本とヨーロッパでは、ある特定の放射性核種の制限値を容認することによってどの程度まで死者と病人を黙認するのか、公衆において議論すべきだ。より安全な制限値というものはないので、どういう判断を下そうがそれは生か死かの判断となる。重要なのは、より安全な放射能制限値というものは存在せず、放射線はどのレベルであっても多すぎるということを公衆にはっきりさせることが重要だ。

6. 4 .平常運転時と事故時に関して、市民のために別々の放射線制限値が規定されていることには、医学上も倫理上も何ら根拠がない。それによって、市民にだけ事故時に不法な健康障害をもたらしているのであり、健康障害の原因について原発運転者は責任を問われない。事故に責任のあるはずの原発運転者はこうして、その責任から一括して解放されている。

6. 5 .放射性ヨウ素汚染が非常に強い場合、牛乳、サラダ、葉菜類、食用野生ハーブの摂取を完全に止めるよう市民に勧告する。
この勧告をできるだけ長期に渡って適用すべきだ。というのは、2011年4月17日とその後も再三に渡って、東京電力(Tepco)が福島第一原発から今年一年を通して放射性物質が放出され続けると説明してきたからだ。原子炉と燃料貯蔵プールで起こったいわゆるメルトダウンが「冷温停止」状態に達するまで、その間に予期しないことが起こらなければだが、約9ヶ月かかると見られる。日本の梅雨では、放射性微粒子がより多く地面に降下していく可能性があるが、特に風向きが太平洋から国土側に変わった場合、たいへん心配だ。

6. 6 .東京電力と日本政府のこれまでの情報政策を見ると、残念ながら市民がオープンかつ当初から危険について知らされていないと推測せざるを得ない。こうした情報の状況を改善するよう政府と産業界に要求する。だが、日本の市民グループとNGOが市民に正確な情報を提供するため、独自に放射線測定を行っているのはたいへん歓迎すべきことだ。市民に情報がないというのは、日本独自の問題ではなく、世界中で原子力利用に関連する一つの問題だ。30

6. 7.電離放射線による健康障害という複雑なテーマに関して市民に情報を提供して市民を助け、理性的な行動を取ることが科学者に求められている。チェルノブイリ後に科学界で高い地位を占める学者たちが市民に対して情報を隠蔽したようなことが(「放射線恐怖症」や「100ミリシーベルト以下の放射線量であれば危険がない」などの間違った決まり文句)日本でも繰り返されるとすれば、それは悲劇だ。

6. 8.われわれはヨーロッパに対しては、リスボン条約に以下の項があることを強調しておきたい。だが、原子力利用部門においては、それを実行しようとすることなどは一度としてなかった。
「欧州連合の環境政策は、欧州連合のそれぞれの地域の条件を配慮して保護レベルを高くすることを目標とする。環境政策は準備と予防の原則、環境破壊を優先的にその根源で撲滅するという基本、それに引き起こした者が責任をもつという原則を基本とする」62

「真実を知らない者は愚か者でしかない。
だが、真実を知っているにもかかわらず、それを嘘という奴、
そういう奴は犯罪者だ」
ベルトルト・ビレヒト: ガリレイの生涯、第13幕

ブレヒト、1938/39年に亡命地デンマークで同劇を執筆
新聞各紙はドイツ人物理学者によるウラン原子の核分裂について報じた。


62 リスボン条約、2007/2009年、タイトル XX 環境, 第191条(2)


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用語解説と測定単位

用語解説

原子は正の電荷を持つ原子核とその周りに存在する負の電子からなる。原子核は正帯電した陽子と電気的に中性の中性子で構成される。化学元素はどれも原子核にある陽子の数で表示される。化学元素はこの原子核の陽子数で区分される。

化学元素には、いくつもの同位体がある。ある化学元素の同位体それぞれはその中性子の数で区分される。たとえば、ウランには原子核に92個の陽子がある。さらに中性子を143個持つものと、146個持つものがある。それで、中性子を143個持つウラン同位体がウラン235、146個持つものがウラン238である。

放射性核種とは、陽子の数、中性子の数、エネルギーの状態によって特徴付けられる原子核の種類のことである。現在、約275個の安定した核種と1,400個の不安定な核種が知られている。自然には不安定な核種はわずかしかない。その他の不安定な核種のすべては人工的に生成される。

現在、この人工生成される核種は主に原発の運転において生成される。放射能とは、外からの影響もなく自ら壊変を起こし、その際にそれぞれ特徴のある放射線を放出する不安定な原子の性質のことである。放射性核種がもともと自然界に存在し、放射壊変によって自然に存在する不安定な原子から安定な原子に変わると、それを自然放射能という。

それに対して、人工的に原子核が壊変することによって放射性核種ができると、それを人工放射能という。 放射性崩壊ともいうが、放射壊変においては再び他の元素の放射性原子に変わる場合が多い。放射性ストロンチウム90はたとえば崩壊して電子1個が放出されると、放射性核種イットリウム90に変わり、イットリウム90もさらに電子1個を放出してジルコニウム90に変わる。

半減期は、はじめに存在した放射性原子の半分の数が崩壊する期間を示す。半減期は崩壊する確率の尺度である。半減期は数秒から数千年までと幅が広い。1グラムのヨウ素129は、約1,570万年後になってようやくその半分が崩壊する。その時点ではじめて、その放射線の半分を失う。ヨウ素131はチェルノブイリ事故後や、現在フクシマ事故においてもかなり測定されているが、その1グラムの半減期は約8日である。約8日後には1グラムのヨウ素131の半量しか残っておらず、さらにその8日後には4分の1グラムしか残っていない。

物理的半減期(Tphys) の他、生物学的半減期(Tbiol) が重要だ。生物学的半減期は通常の非放射性物質が代謝や排出によって初期量の半分にまでなる期間を示す。物質が放射性の場合、放射線被曝線量を見るには、物理学的半減期と生物学的半減期を組み合わせた実効半減期(Teff) が重要となる。生物学的半減期は個人によって異なるほか、個人の健康状態にも依存する。たとえば腎臓病を持っている人では、排尿機能に変化が出ていることから生物学的半減期が長くなっていることがある。実効半減期は以下の式で計算される。

Teff = Tbiol · Tphys / (Tbiol + Tphys)
生物学的半減期と実効半減期を規定するにしても、大きな不確定要素がある。監視された人体実験でしか規定することができない上、この種の人体実験は倫理上の理由から禁止されているからだ。
電離放射線:原子の放射性崩壊で放出される放射線は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線に分類される。放射性崩壊で発生する電離放射線は他の原子と分子を励起したり、他の原子の周りに存在する電子を放出させる。ここで電荷を帯びた原子(イオン)が生成される。

そのために電子放射線と呼ばれる。アルファ線、ベータ線、ガンマ線が害を及ぼす影響は、主に原子のイオン化エネルギーによる。
アルファ線は原子核から放出された正の電荷を帯びた粒子の流れで、粒子は中性子2個、陽子2個からなる(ヘリウム核のように)。質量と電荷が大きいことから、他の原子、分子 35と衝突することが多く、軌道上で電離作用を起こす。生物組織での飛程は約20分の1ミリメートルで、細胞数個分にしかならない。

ベータ線は原子核が崩壊する時に放出される電荷を帯びた非常に質量の小さい粒子で、通常は電子の流れである。その生物組織での飛程は数ミリメートルから数センチメートルである。ストロンチウム90は純粋なベータ線核種である。ガンマ線は電磁放射線の一種である。アルファ線ないしベータ線が放射されても、原子核は励起された状態のままで、過剰なエネルギーが残っている場合がある。

この過剰なエネルギーは一瞬のうちに電磁波となる。ガンマ線は生物組織を透過し、エックス線に似ている。
ヨウ素131はセシウム134、セシウム137と同じように、ベータ線の他、ガンマ線も放射する。
そのため、これらの核種は比較的簡単にガンマ線によって測定しやすい。
中性子線は電荷を持たない核子からなる。核子は主に核反応において放出される。核子は鉛によってさえも簡単には遮蔽できないが、多量の水とパラフィンで遮蔽することができる。
放射性廃棄物輸送容器の搬送や原子力関連施設の事故時には、中性子線は作業員にとって重要な意味を持っている。

単位ある物質の放射能の物理学的な強度とは、時間単位当りの放射性崩壊の頻度のことである。物質の放射能は従来、キュリー(Ci)という単位で示されていたが、現在はベクレル(Bq)
という単位が使われる。1ベクレル(Bq)の放射能とは、アルファ線核種であろうが、ベータ線核種であろうが関係なく、1秒間に原子核1個が崩壊することをいう。

1キュリーは370億ベクレルに相当する(1キュリーというとんでもなく大きな数は、ラジウム1グラムが秒当り約370億個の原子が崩壊し、初期の段階で「比較物質」として利用されたので、そうなっ
た)。毎秒崩壊する原子の数が多い(ベクレル数が高い)ということは、電離放射線がたくさん放射されるということだ。毎秒崩壊する原子の数が少ない(ベクレル数が低い)ということは、放射される電離放射線が少ないということだ。

これら放射能の単位は、どれくらいの放射性物質が原子力関連施設から放出されるかを示すために利用される。ここで、ベクレル表示は誤解しやすく、過小評価されやすい。低い値が必ずしも自動的に危険が少ないことを意味するとは限らない。放射性同位体の危険性はその瞬間の放射能と主にその残存度から決まる。

これは、放射性物質ヨウ素129とヨウ素131の半減期を比較すると、大きな差があることからもはっきりする。以下の事例からわかるように、放射性物質が異なると、放射能が同じでも質量に差が出る。
370億ベクレル (1キュリー)のヨウ素131は600万分の1グラムに相当し、370億ベクレル (1キュリー)のヨウ素129は5.6キログラムに相当する。

放射線の影響に関して、「放射線被曝」と「放射線障害」という用語を正確に現すにしてもはっきりした尺度がない。放射線の影響は放射線を放射されたもの(人間、動物、植物、死物、皮膚、肺、生殖腺、遺伝子など)によって非常に異なる。一部にはその影響がまだまったく研究されていないものもある。

それでも影響と危険を推計(!)できるようにするため、主として以下の線量と単位を使うことで合意された。ラド(rad:radiation absorbed dose) かグレイ(Gray:1 Gray = 100 rad) の単位で示さ
れるエネルギー量(吸収線量)は、放射線が放射された物質に吸収されるエネルギーの量を示す。1グレイとは、1キログラムの任意の物質に1ワット秒ないし1ジュールのエネルギーが吸収されたということだ。

このエネルギー量は非常に小さい。放射線が人間一人を確実に殺
せる量は10グレイだが、熱エネルギーとして人体をわずか数千分の1度C暖める程度のものにすぎない。

だがまもなく、物質から得られる放射線エネルギーの数値がその影響を十分に現さないこと、特に生物的学影響にはまったく結びつかないことがわかった。生物学的影響は放射線の種類によって異なる。すでに説明したように、重要な放射線として4つの放射線があり、その影響について別々に評価する必要がある。少し専門的にいうと、放射線の異なる生物学的な影響を評価するため、放射線を係数(放射線荷重係数 wR )を使って評価する。

放射線 wR-係数
アルファ 20
ベータ 1
ガンマ 1

中性子 5 から20、中性子の速度、エネルギーによる。つまり、アルファ線はベータ線よりも20倍も影響があると評価する。
こうして、以下のように単位をシーベルト(Sv)とする等価線量の概念が導入された。

1グレイのアルファ線 = 20シーベルト
1グレイのベータ線 = 1シーベルト
1グレイのガンマ線 = 1シーベルト
1グレイの中性子線 = 5から20シーベルト

外部被曝による臓器線量はこうして計算される。臓器線量は、臓器・組織が受ける放射線の照射する平均エネルギー量と放射線荷重係数から得られる。空気の吸入や食品の摂取によって受ける放射能(ベクレル)から内部被曝の等価線量を換算するため、国際放射線防護委員会(ICRP)は放射性核種毎に決められた線量係数のリスト
を作成した。

線量係数は、摂取方法(吸入、経口)と年齢に応じて分類されている。線量係数(単位:Sv/Bq)に 放射能(Bq)を掛けると、等価線量(Sv)になる。ICRPの線量係数リストは、各国政府によって放射線被曝を計算する場合に適用するべきものとして認められた。
これは、放射線の影響を比較できるようにする推計でしかない。

放射線荷重係数と線量係数については、評価が定まっていない。というのは、単に放射線の種類と残存度だけに関係するものではなく、それぞれの放射線の量、時間的な配分、放射線を受けた人、臓器、臓器系の(健康)状態に関係するほか、放射線以外に障害をもたらす他の影響(お互いに強め合う相乗的な影響)がないのかどうかにも関係するからだ。放射線荷重係数と線量係数は他の
動物や植物には適用されない。

すべての臓器線量の値は実効線量ないし実効等価線量と呼ばれ、同じくシーベルトを単位とする。(等価線量に)臓器・組織それぞれの組織荷重係数を掛けて得られる。ここで「実効」とは、組織荷重係数が疾患の起こる可能性を考慮するのではなく、単に最初の後継世代までにそれによって引き起こされる死ないし遺伝子障害だけしか考慮しないということを意味している。

たとえば甲状腺の荷重について、国の規制作成者はわずか5%としか規定していない。それは、必ずしも誰もが甲状腺ガンで死ぬわけではなく、甲状腺ガンが手術で処置しやすいということからだ。それに対して、すべての臓器、臓器系のうち生殖腺の放射線被曝が20%と、最も荷重が大きく設定された。

ありうる限りの条件付きで得られたシーベルトの値は、人間の放射線被曝を示すための計算値である。これは抽象的な想定でしかなく、被曝した個人個人の予測を可能とするものではない。シーベルトの数値はまた、客観的な物理量を示すものでもない。この数値は健康に与える放射線被曝の影響を統計的に推計すべき、ちょっとだけ有用な中間結果ということだ。

つまり、放射線を照射される市民の中に白血病、放射線を原因とするガン、奇形、死産などが起こる件数が増加するということを示しているにすぎない。

影響を推計するということにおいては、常に操作される危険がある。国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線医療と原子力産業のロビー団体によって設立された。各国の規制作成者はICRPの勧告を基準にしている。ICRPは、原子力産業の「経済・社会上の長所」をうまく利用できるようにするには人間の放射線被曝を許容しなければならないと、再三再四主張している。

ICPRは過去において、ICPRは勧告した放射線量の結果として放射線によって重い遺伝子疾患やガンで死亡するケースをほとんど予測しておらず、このような障害は放射線によるものではない形体の「自然の変動幅」に入っておればほとんど見極めることのできるよう
なものではないと主張していた。それに対して、子孫での軽い突然変異と一般的な健康状態の悪化が最も頻繁に起こる影響ではないかとする。こうした影響は疫学的調査によって明らかにすることができるのだが、各国政府はこれまで、市民の健康状態に与える微妙な影響を本格的に記録する努力を全くしてこなかった。

カナダの科学者で、もうひとつのノーベル賞受賞者であるロザリー・バーテルは、1985年(ドイツ語版は1987年)に出版された本『No Immediate Danger?』で、次のように明言している。

「放射線暴露がガンで死ぬというわずかなリスクをもたらし、そのリスクから逃れられる見通しが自動車事故から逃れられる見通しよりも高いという印象が、市民に与えられた。健康状態の長期悪化をもたらす心臓病や糖尿病、関節炎、重いアレルギーが起こる確率については、まったく述べられていない。

電離放射線も自発的流産、死産、幼児の死、ぜんそく、重いアレルギー、免疫性の低下の原因となる可能性がある他、こどもの白血病や腫瘍、先天性疾患、精神障害、身体障害の原因となる可能性があることは、ほとんどの人が知らない。以上挙げた悲劇の多くは、個人ないし家族に直接悲劇をもたらすが、社会には間接的にしか悲
劇をもたらさない」

この現実は現在までも変わることがなく、放射線被曝後の早期老化現象を全く考慮しないままにしている線量計算にも表現されている。「経済・社会上の便益」に対抗する形でしか「健康障害」を裁量しないでリスクと便益を判断するのは、 個人ないし家族が負わなければならない代価よりも、政府がその姿勢において社会のリスクと便益により大きな重きを置いているということだ。

執筆者紹介

セバスチャン・プフルークバイル

物理学博士。1947年生まれ。ドイツ放射線防護協会会長。ボンにあるオット・フーク放射線研究所会員、欧州放射線リスク委員会(ECRR)理事。チェルノブイリ事故、フクシマ事故を解明するたくさんのプロジェクトに参加するほか、事故周辺地域のこどもたちの社会復帰活動に参加。1990年、ベルリンで市民団体「チェルノブイリのこどもたち」を設置し、長年ドイツ・チェルノブイリ支援協会(ミュンヒェン)の理事を務めていた。

1989年に東独の民主化運動で最初に設立された市民団体「ノイエス・フォールム」の共同設立者の一人で、壁崩壊後のハンス・モドロウ政権下では、東独のエネルギー政策を改革する目的で数ヶ月間大臣を務める。1991年から1995年までは、ベルリン市議会でノイエス・フォールム選出の議員も務める。

トーマス・デルゼー

工学士、科学ジャーナリスト。1947年生まれ。ドイツ放射線防護協会理事、放射線テレックス(Strahlentelex)発行人。1986年、チェルノブイリ事故後、ベルリンに設立された独立系放射線測定所の共同設立者の一人。放射線テレックス(Strahlentelex)は1987年の発刊以降、放射線被曝の最小化を中心テーマとする独立系特殊情報サービスとして存続し、デルゼーの編集責任の下で発行されている(www.strahlentelex.de)。さらに、医師の研修のために環境医学基礎講座を開催して、ベルリン医師会の労働医学健康保護アカデミーを支援していた。

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